凸額でこ)” の例文
飛び出したお凸額でこの下には、なみだにあふれた腫れぼったい瞼があった。顔の色はこれがほんとの蒼いのだといいたいくらい不健康な色をしていた。
深夜の市長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
侯爵夫人はもとから春子夫人のお喋舌しやべりとお凸額でことが気に入らなかつたが、鳩山和夫氏が旧友を捨てて政友会へ入つてから一層それがひどくなつた。
「お重また怒ったな。——佐野さんはね、この間云った通り金縁眼鏡きんぶちめがねをかけたお凸額でこさんだよ。それで好いじゃないか。何遍聞いたっておんなじ事だ」
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
自分の少しお凸額でこなのを気にしたり、子供の時に腫物を切つた頬の創痕を悲しんだりして居たが、考へれば、その時すでに姉は情夫をとこを拵へて居たのだ……。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
「お凸額でこや眼鏡は写真で充分だわ。何も兄さんから聞かないだってあたし知っててよ。眼があるじゃありませんか」
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
自分は電報紙を持ちながら、是非共おさださんを貰いたいという佐野のお凸額でことその金縁眼鏡きんぶちめがねを思い出した。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)