冷々ひえ/″\)” の例文
ぢつとこみあげてくる哀傷の一念を抑えて、剃り立ての真蒼な面の光沢を冷々ひえ/″\と労ると、暑い夏の日にもしんみりと霊魂たましひの冷たさが身に染みる。
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
四谷よつやつけの二夜ふたよ露宿ろじゆくからかへつたばかり……三日みつか午後ごご大雨おほあめに、ほねまでぐしよれにつて、やがてかへたのち冷々ひえ/″\しめつぽい、しよぼけた身體からだを、ぐつたりとよこにして
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
対う河岸は宗右衛門町で、何をする家か、灯がゆら/\と動いて、それが、螢を踏み蹂躙にじつた時のやうに、キラ/\と河水に映つた。初秋の夜風は冷々ひえ/″\として、河にはさゞなみが立つてゐた。
鱧の皮 (新字旧仮名) / 上司小剣(著)
ある時は、五百尺の暗い、冷々ひえ/″\とする坑道を示し合して丸太の柵をくゞりぬけた。
土鼠と落盤 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)