“冱寒(ごかん)” の例文
ニューゼーランドハワイアゾールス等諸島や南北冱寒(ごかん)の地は蛇を産せぬ。ギリシア海に小島多く相近きに産するところの物有無異同あり。
にも拘(かかわ)らず、だからどうにかしなければならぬと云う悶えも胸を去らなかった。はじめて知る長い冱寒(ごかん)の雪に埋れてそれを考え、それを相談した。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
研(と)ぎたての刀を横に置いたように、加茂川の水は青かった。ふり仰ぐと冱寒(ごかん)の月は冷々(ひえびえ)と冴えているのだった、かかる折には望ましい雲もいつか四方にくずれて。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時は冱寒(ごかん)の真冬、天下に聞ゆる陳倉道(沔県(べんけん)の東北二十里)の嶮(けん)と、四山の峨々(がが)は、万丈の白雪につつまれ、眉も息も凍(い)てつき、馬の手綱も氷の棒になるような寒さであった。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
引き摺って、伊勢の宮の裏山へ登った時——あの晩の星もきれいだったな。あれは、冱寒(ごかん)の冬だったが、今ごろならば、氷花(つらら)の樹々にも、もう山桜のつぼみが膨(ふく)らんでいる時分
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あたりの樹々は、露が凍(こお)って、白珠(しらたま)をつらねたように氷が咲いていた。大地は、針の山に似ている冱寒(ごかん)の深夜だった。けれど、四人の若人(わこうど)の息は、血は、さながら火と火のように熱かった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)