六ヶ敷むつかし)” の例文
しかし折角の試みも細田氏が外に姿を現わさないので、その恐怖がどの位まで氏に影響しているかをあからさまに知ることは六ヶ敷むつかしいことでした。
三角形の恐怖 (新字新仮名) / 海野十三(著)
主翁は兎も角せがれや親戚の者共とも相談の上追って御返事すると云うた。「六ヶ敷むつかしいな」彼は斯く思いつゝ帰途に就いた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
社会の進運に振捨てられて無用の長物となってしまうが、いずれもそれほど六ヶ敷むつかしいことではない。
我輩の智識吸収法 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
それですが、江戸時代の文学だの、明治の文学だのと云ふ六ヶ敷むつかしいことになると、言ひにくうございますから、たゞね、小説、草双紙くさざうし京伝本きやうでんぼん洒落本しやれぼんと云ふ其積そのつもりで申しませう。
いろ扱ひ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「今日はひょっとしたら大槻おおつきの下宿へ寄るかもしれない。家捜しが手間どったら寄らずに帰る」切り取った回数券はじかに細君の手へ渡してやりながら、彼は六ヶ敷むつかしい顔でそう言った。
雪後 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
僕は思わず声を上げた。そして、そう思って見れば見る程、その事実は、益々ハッキリして来る。勿論もちろん、そんな六ヶ敷むつかしい、激しいステップのフィギュアーを持ったダンスを僕は知らなかった。
花束の虫 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
だ、自分が其の間に種々いろいろと考えて見ると、一体、自分の立てた標準に法って翻訳することは、必ずしも出来ぬと断言はされぬかも知れぬが、少くとも自分に取っては六ヶ敷むつかしいやり方であると思った。
余が翻訳の標準 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)