兜率天とそつてん)” の例文
掘り得た金で追善したので、蛇身から兜率天とそつてん鞍替くらがえしたちゅう話など、かのインド譚から出たよう、芳賀博士の攷証本に見るは尤も千万だ。
例えばその第四の兜率天とそつてんという慾天の如きは、手をり合うだけでその充足を得る。第五の楽変化天らくへんげてんの如きは相い視て笑うことによってその充足を得る。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
梯の子十五、六ばかりを踏みて上れば、三十三天、夜摩天、兜率天とそつてん忉利天とうりてんなどいうあり、天人石あり、弥勒仏みろくぶつあり。また梯子を上りて五色の滝、大梵天、千手観音などいうを見る。
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
きばの六つある大白象だいびゃくぞうの背に騎して、兜率天とそつてんよりして雲を下って、白衣の夫人の寝姿の夢まくらに立たせたまう一枚のと、一面やや大なる額に、かの藍毘尼園中らんびにおんちゅう、池に青色せいしょく蓮華れんげの開く処。
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
三度の飯を四度食べても、毎日一度は探偵小説を読まねば気が済まぬという自分に、「二銭銅貨」のような優れた作を見せて下さった森下さんは、その功徳だけでも、兜率天とそつてんに生れたまうこと疑なし。
「二銭銅貨」を読む (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
ただし野干咆ゆるより虎の居処知れ討ち取らるる例多しとウットが書いた。かく不埒ふらち千万な野干も七日不食十善を念じ兜率天とそつてんに生まれたと『未曾有経』に出づ。
それで西方兜率天とそつてんか何処か知らぬが遠いところへ移転したきりというのがまりであるが、寂心の事を記したのは、それで終っていない。東山如意輪寺で型の如くにいた後、或人が夢みた。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)