停留場ていりゅうば)” の例文
自分たちは外套がいとうの肩をすり合せるようにして、心もち足を早めながら、大手町おおてまち停留場ていりゅうばを通りこすまでは、ほとんど一言ひとこともきかずにいた。
毛利先生 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
小泉純一は芝日蔭町しばひかげちょうの宿屋を出て、東京方眼図を片手に人にうるさく問うて、新橋停留場ていりゅうばから上野行の電車に乗った。目まぐろしい須田町すだちょうの乗換も無事に済んだ。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それから停留場ていりゅうばへ来て見ると、赤電車が出ようとするところじゃありませんか、急いでうしろから飛び乗って、見ると、三人の客がいるのですよ、酒に酔ってるし、どんな客がいるのか
雪の夜の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
俊助は軽蔑とも同情とも判然しない一種の感情に動かされながら三度みたびこう呟いて、クラブ洗粉あらいこの広告電燈が目まぐるしく明滅する下を、静に赤い停留場ていりゅうばの柱の方へ歩き出した。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
初子はつこ辰子たつことを載せた上野行うえのゆきの電車は、半面に春の夕日を帯びて、静に停留場ていりゅうばから動き出した。俊助しゅんすけはちょいと角帽かくぼうをとって、窓の内の吊皮つりかわにすがっている二人の女に会釈えしゃくをした。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)