保津川ほづがわ)” の例文
北に保津川ほづがわの一水を隔てて、愛宕山あたごやまや龍ヶ嶽の諸峰をのぞみ、南は明神ヶ嶽、東は大枝山というふうに、山裾から山裾にかこまれている一盆地だ。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
洛外らくがい嵯峨さがの大沢の池の月——水銹みさびにくもる月影は青かったが、もっと暗かった。嵐山の温泉に行った夜の、保津川ほづがわの舟に見たのは、青かったが、もっと白かった。
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「ハハハハ僕は保津川ほづがわと肝胆相照らした訳だ。愉快愉快」と宗近君は二たび三たび手をたたく。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その後しばらくしてうまいと思って食ったのは、京都の保津川ほづがわのほとりにおいてであった。洛西嵐山の渡月橋とげつきょうを渡って、山の裾を七、八丁登ると、そこに嵐山温泉というのがある。
鮎の試食時代 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
浮かれ人を花に送る京の汽車は嵯峨さがより二条にじょうに引き返す。引き返さぬは山を貫いて丹波たんばへ抜ける。二人は丹波行の切符を買って、亀岡かめおかに降りた。保津川ほづがわ急湍きゅうたんはこの駅よりくだおきてである。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「よく何ともござりませんでしたな。この渓流の出るところが保津川ほづがわの上流でござります。わしはこれから一里半ばかり下の深谷村の儀助ぎすけというものでござりますが、まあわしのところで少しおやすみなさるがようがすだ」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)