余程よッぽど)” の例文
旧字:餘程
此分だと、余程よッぽど何か変った事が、例えば、火事とか大地震とかがあって、人心の常軌を逸する場合でないと、隔ての関を破って接近されなくなりそうだ。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
番人もむごいぞ、頭を壁へ叩付けて置いて、掃溜はきだめへポンと抛込ほうりこんだ。まだ息気いきかよっていたから、それから一日苦しんでいたけれど、彼犬あのいぬくらべればおれの方が余程よッぽど惨憺みじめだ。
アイじゃ可笑おかしいわ、ウンというンだわ、と教えられて、じゃ、ウンと言って、可笑おかしくなって、不覚つい笑い出す。此方が勘ちゃんに頭をられるより余程よッぽど面白い。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
むかしの幸福。今の苦痛……苦痛は兎角免れ得ぬにしろ、懐旧の念には責められたくない。昔を憶出おもいだせば自然と今の我身に引比べられて遣瀬無やるせないのは創傷きずよりも余程よッぽどいかぬ!
余程よッぽど下宿しようかと思った、が、思ったばかりで、下宿もせんで、せられる儘に靴磨きもして、そうして国元へは其を隠して居た。少し妙なようだが、なに、妙でも何でもない。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)