仙境せんきょう)” の例文
尊は門人達に、「熊山、吉野山、伯耆ほうき大山だいせんなどには仙境せんきょうがあって、吉野山の神仙と、熊山の神仙とは常に往来ゆききしている」
神仙河野久 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
たとえば仙境せんきょう異霊いれいあって、ほしいままに人の薬草を採る事を許さずというが如く聞えたので、これがすくなからず心にかかった。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
桃太郎が鬼が島を征服するのがいけなければ、東海の仙境せんきょう蓬莱ほうらいの島を、つちかまとの旗じるしで征服してしまおうとする赤い桃太郎もやはりいけないであろう。
さるかに合戦と桃太郎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
鹿の背をかりて、しばらくたどってくると、小文治こぶんじ馥郁ふくいくたるかおりに、仙境せんきょうへでもきたような心地がした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
アントアネットはそういう接触を、長く心の奥に秘めた——その心は、悲しみに包まれてはいたけれど、オルフェウスの仙境せんきょうの霊を浸してる光に似たおぼろな光が、悲しみのまん中に微笑ほほえんでいた。
そうして七十歳にでもなったらアルプスの奥の武陵ぶりょうの山奥に何々会館、サロン何とかいったような陽気な仙境せんきょう桃源とうげんの春を探って不老の霊泉をくむことにしよう。
銀座アルプス (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
(ほとんど仙境せんきょう。)
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)