仏手柑ぶしゅかん)” の例文
旧字:佛手柑
仏手柑ぶしゅかんのような、黄ばんだ瘠せた手を差しのべながら、海洞ほらあなへ潮が差し込んで来るような妙に響のない声で
犂氏の友情 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
僕はそのそばに伏せてある鉄網かなあみ鳥籠とりかごらしいものをながめて、その恰好かっこうがちょうど仏手柑ぶしゅかんのごとく不規則にゆがんでいるのに一種滑稽こっけいな思いをした。すると叔父が突然、何分くさいねと云い出した。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
仏手柑ぶしゅかんのような御光が、黄色く焦げるようにさしている、路端に御嶽大権現だの、何々霊神だのという、山の神さまや、行者の名を刻んだ石塔を見るにつけても、もう山国へ来たという感じが
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
のきには尾垂おだれと竹の雨樋が取付けてあり、広い庭に巴旦杏はたんきょうやジャボン、仏手柑ぶしゅかんなどの異木が植えられ、袖垣そでがきの傍には茉莉花まつりか薔薇花いけのはななどが見事な花を咲かせている。