仁慈なさけ)” の例文
そこにはまた葡萄の房が、店主の仁慈なさけで、通りすがりの人が無料で口に露気を催すようにと、人目に立つ鉤にぶら下げられていた。
鉄が親の気持もよかろし汝の寝覚めもよいというものだと心づけて下すったその時は、ああどうしてこんなに仁慈なさけ深かろとありがたくてありがたくて私は泣きました
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
どこまでも弱い者を愛護かぼうて下さるお仁慈なさけ深い御分別にもすがらいで一概に厭じゃとは、たとえば真底から厭にせよ記臆ものおぼえのある人間ひとの口から出せた言葉でござりまするか
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
嗚呼何様して此様こんな仁慈なさけ深かろと有難くて有難くて私は泣きました、鐵に謝罪る訳は無いが親方の一言に堪忍がまんして私も謝罪に行きましたが、それからおつなもので何時となく鐵とは仲好になり
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)