人絹じんけん)” の例文
現代では人絹じんけんというものがある。人絹製の帯や襟巻えりまきなどに、上等のものよりも数等感心すべきさっぱりとした美しい柄を発見する。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
こぶでも、ピンからキリまである。つまり、人絹じんけん本絹ほんけんとの区分で、自然のものにも人絹みたいなつまらんものもある。
味覚馬鹿 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
人絹じんけんと間違っているらしいのだ。あまりひどすぎて一座みな興がめ、誰も笑わず、しかめつらになった。
眉山 (新字新仮名) / 太宰治(著)
この頃は人絹じんけんが大変進歩して来て、下手なメリンスを買うより安いと云うのですから、田舎出いなかでの娘さんたちは、猫も杓子しゃくしもキンシャまがいで押しているようです。
着物雑考 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
わたくしは趣味の上から、いやにぴかぴかひかっている今日の柩車を甚しくにくんでいる。外見ばかりを安物で飾っている現代の建築物や、人絹じんけんの美服などとその趣を同じくしているが故である。
西瓜 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
真夏の海辺に着たいような赤とブルウの大名縞だいみょうじま、そんな人絹じんけんのタフタが沢山出来ているそばでは地味な村山大島が、織られていたり、畳を敷いたところでは、娘やおばあさんたちが