串柿くしがき)” の例文
新吉は外方そっぽうを向いて、壁にかかった東郷大将の石版摺せきばんずりの硝子張ガラスばりの額など見ていた。床の鏡餅に、大きな串柿くしがきが載せてあって、花瓶かびんに梅がしてあった。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
恐れながら、御意はそのまま、殿へお返し申しましょう。——お鞍の上で、串柿くしがきうりなど喰べて、御城下を
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
河豚ふぐにあたれば、樟脳しょうのうの粉を湯に溶解してこれをのみ、吐血をなせば、串柿くしがきを黒焼きにし、これを粉にしてのみ、あるいは、打咽には柿のへたを紛にしてこれをのみ、耳に水が入れば
妖怪学一斑 (新字新仮名) / 井上円了(著)
串柿くしがき二つ蜜柑みかん二つを供するのを、クサという風さえある(口承文学二号)。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
兄の今若は、一本の串柿くしがきを、弟の手から奪い取って、母の前につきつけながら、口をとがらして告げた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)