世嗣よつ)” の例文
「ひどいお母さんだわね。わたしが可愛がってあげますから。容一郎さんというの、北野家の大切の大切のお世嗣よつぎですのね」
地上:地に潜むもの (新字新仮名) / 島田清次郎(著)
どうしてもよい世嗣よつぎを定めねばならぬ。この多事な日に、内は諸藩の人心をしずめ、外は各国に応じて行かねばならぬ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
いれ、皇統のお世嗣よつぎをさえ、意のままにうごかし奉るなどの僭上沙汰にありました。そのきばをだに与えなければ。……そして武門は武門の分を守らすにとどめおけば
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お栄もまだ御覧の通り、婿むこをとるほどの年でもございません。もし唯今茂作の身に万一の事でもございましたら、稲見の家は明日あすが日にも世嗣よつぎが絶えてしまうのでございます。
黒衣聖母 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「阿Qの罰当りめ。お前の世嗣よつぎはえてしまうぞ」
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)