下脣したくちびる)” の例文
フランスの寺院にある浮き彫りを見た者は、賢い童貞らが不潔な娘らをながめながら、下脣したくちびるをとがらしているのを思い起こすだろう。
あごだけ見えて顔は見えない。どうかして顔が見たいものだ。あ。下脣したくちびるが見える。右の口角から血が糸のように一筋流れている。
鼠坂 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ポケットの中に両手を握りしめ、小鳥のように首を振り、下脣したくちびるをつき出して慧敏けいびんらしいふくつらをした。
直接の見地から見れば、民主主義の兵士であり、同時代の機運を離れて見れば、理想に仕える牧師であった。深いひとみと、少し赤い眼瞼まぶたと、すぐに人を軽蔑しそうな厚い下脣したくちびると、高い額とを持っていた。
院長は躊躇ちゅうちょするように下脣したくちびるをとがらしたが、やがて言い出した。
テナルディエは妙に首をひねりながら下脣したくちびるをつき出した。