一連ひとつら)” の例文
と眼の前に蘆の葉の薄緑が一連ひとつらに輝いて見え出した。私は水にひたした濡れ手拭を取つて、船の中へ立つた。
霧の旅 (旧字旧仮名) / 吉江喬松(著)
立ち尽くし、見詰め合っている二人の頭上には、練り絹に包まれたようなおぼろの月がかかってい、その下辺したべを、帰雁かえるかり一連ひとつらが通っていた。花吹雪が、二人の身を巡った。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そのふもとまで見通しの、小橋こばし彼方かなたは、一面の蘆で、出揃でそろってや乱れかかった穂が、霧のように群立むらだって、藁屋わらやを包み森をおおうて、何物にも目をさえぎらせず、山々のかやすすき一連ひとつらなびいて、風はないが
海の使者 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ただ一連ひとつらに從順にはなりきれなかつたのだ。
「郭子儀」異変 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
一連ひとつらの、指環もがなと叫ぶのだ!