一掴いっかく)” の例文
夜、けんとするや、一斉の銃声あるべし。まさに、嚢中のうちゅうの敵を一掴いっかく、そのときにあり。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たやすく一掴いっかく千金の金もうけができるにもかかわらず、いやしくもその品物が天下の人々のためにならぬ性質のものたる以上、世の実業家は捨ててこれを顧みぬという事であれば
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
やはりぬれ手で粟の一掴いっかく千金を夢みるようになるのもよんどころないことで、ついには実着な勧業を旨とする博覧会でさえ、福引でなければ客が集まらぬごときいやしい風俗が生ずるのである。
動物の私有財産 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
時を合わせて呼応一掴いっかく、孔明を擒人とりこになさんこといま眼前に迫る。期してはずし給うな。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だから、士気の鼓舞こぶ、戦機の一掴いっかくも、時により信長の風に似、信玄の智略に似、秀吉と共通する点はあっても、かれの胸算は、いつも合法的な計数にもとづき、決してケタははずしていない。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)