一廻ひとまわ)” の例文
その時、横町の薬屋の角から出て来た人の影があるので、よく見るとそれは今の四人連れで、この町内を四角に一廻ひとまわりして来たらしいんです。
赤い杭 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
人生というものは、螺旋らせん階段を登って行くようなものだ。一つの風景の展望があり、また一廻ひとまわり上って行けば再び同じ風景の展望にぶっつかる。
狼疾記 (新字新仮名) / 中島敦(著)
六十一は一廻ひとまわりそれからは赤ン坊から生まれかえった気持ですから、今日では鰹の刺身も口にするようになりました。
誘い疲れて断念した赫子と麻川氏は誘うのを止めて、ほんの一廻ひとまわりその辺を泳いだだけでぐ岸へ帰って来た。
鶴は病みき (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
新吉は女から一けんばかり離れて夕飯後ゆうめしごの腹こなしに公園を一廻ひとまわりしている人のようなふうをして歩いた。七八人の人の群がむこうから来たので女の姿はちょとその陰になった。
女の首 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)