一儀いちぎ)” の例文
御坊の羽黒、拙道せつどうの秋葉に於いても、旦那だんなたちがこのたび一儀いちぎを思ひ立たれて、拙道使つかいに立つたも此のためぢや。申さずとも、御坊は承知と存ずるが。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いやしくも、成政は、人でおざれば、犬との交際つきあいには、事ごとに、蔑視べっしをくれておるにはおるが——このたび徳川どのへ申し入れた一儀いちぎは決して私怨しえんなどではない、公憤でござる
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(せっかくの御好意なれど、このたびは、御承知のとおり大事の一儀いちぎにて、小倉におもむく途中のかたがた、便船もこよいのうちむろの津へまわる由。あしからず御一同へお伝えを)
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)