-
トップ
>
-
にくぶとん
宝沢が読んで聞かした漢文で書いた『
肉蒲団』という
袖珍本もそこから借り出してきたものであった。
宮なるよ!
姦婦なるよ! 銅臭の
肉蒲団なるよ! とかつは驚き、かつは憤り、はたと
睨めて動かざる
眼には見る見る涙を
湛へて、唯
一攫にもせまほしく肉の
躍るを
推怺へつつ
試に思へ、
品蕭の如き、
後庭花の如き、
倒澆燭の如き、
金瓶梅肉蒲団中の
語彙を借りて一篇の小説を作らん時、善くその
淫褻俗を
壊るを看破すべき検閲官の
数何人なるかを。(一月三十一日)
金瓶梅、
肉蒲団は問はず、予が知れる支那小説中、誨淫の
譏あるものを列挙すれば、
杏花天、
燈芯奇僧伝、
痴婆子伝、牡丹奇縁、
如意君伝、桃花庵、
品花宝鑑、意外縁、殺子報、花影奇情伝