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とほしかご
頼みし女中は今日は
通駕籠にて
鎌倉迄行べき約束ゆゑ善六は朝早く龜屋へ來り亭主に
斯と言入れ
約束の
駕が
迎ひに參りたりと
云せたり徳右衞門は
南無三と思ふ色を
下に
布しが今日も
乘るゝ約束
成ば小袖は
其儘我等が
預り置て只今持て參りたり
然ば一應の
咄も
無て出立すべき筈は
無と
云ば徳右衞門
押返しいや決して
僞り
成ず
實に
昨夜女中よりの咄には
明日鎌倉の尼寺まで
通駕籠で參る約束はしたれ共
那駕籠屋は何とやらん
心元なし明朝迎ひに參らば程能
斷り
呉よと頼まれたり
若僞りと思は