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うちまか
父が
後妻とし私が
爲に
繼母なりしも家は段々衰へて父は四年以前より
苟且の病ひにて
打臥たるが家の事
打任せたる彼のお早どのは夫の病氣を
遠く来て熊岳河の砂の湯に
打任せたる我が心かな
其方儀
盜賊とは
知ざるとも
召使ひ久兵衞へ
家業向打任せ候により浪人文右衞門へ
難儀を
掛候段重々
不埓に付
屹度咎め申付べきの處
格別の
御憐愍を以て御沙汰
之なき間文右衞門へ
詫金百兩遣はすべし
身をも心をも
打委せて
詐ることを知らざりし恋人の、忽ち敵の如く
己に
反きて、
空く他人に嫁するを見たる貫一が心は更に
如何なりけん。