御子みこ)” の例文
ややありていう「牢守ろうもりは牢のおきてを破りがたし。御子みこらは変る事なく、すこやかに月日を過させたもう。心安くおぼして帰りたまえ」
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ゆらい後醍醐には、ご壮年からもう、大きな御子みこが多かった。生涯を通じては、三十人をこえる皇子や内親王もあったのである。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いろいろな可笑しな欠点があるにしても、どこやらに、神の御子みこのような匂いが致します。あたしだって、誇りの高い女です。
新ハムレット (新字新仮名) / 太宰治(著)
「御井寺勘録寺家財雑物等事」及び「古今目録抄」によれば太子の御子みこ山背大兄王やましろのおいねのみこと由義王の創建されしところと伝えられる。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
ここに答へて白さく、「今火の稻城いなぎを燒く時に、中にれましつ。かれその御名は、本牟智和氣ほむちわけ御子みことまをすべし」
日本にっぽん一の御子みこからまたなきものにいつくしまれる……。』そうおもときに、ひめこころからは一さい不満ふまん、一さい苦労くろうけむりのようにえてしまうのでした。
もう一人もやはり僧侶そうりょで、広沢ひろさわ寛朝僧正かんちょうそうじょうという人である。大僧正になった人で、仏教の方でも有名であり、宇多天皇の皇子の式部卿しきぶきょうの宮の御子みこである。
大力物語 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「この御子みこをあなたのお子さまとおぼしめしてくださるならば、どうぞひきとってご養育なすってくださいまし」
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
兵衛佐平定文ひやうゑのすけたひらのさだぶみと云ふ人ありけり、あざなをば平中とぞ云ひける、御子みこの孫にていやしからぬ人なり、そのころの色好みにて人の、娘、宮仕人みやづかへびと、見ぬは少くなんありける」
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その時あま人申様もうすよう、もしこのたまを取得たらば、この御子みこを世継の御位みくらいになしたまえともうししかば、子細しさいあらじと領承したもう、さて我子ゆえに捨ん命、露ほどもおしからじと
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おそれ多いが天皇の御子みこも将軍家の姫君も、天下の名医を集めながら平凡な病気で亡くなることがある、狂人の刃にかかる者もあるし、転んで頭を打っただけで死ぬ者もある
御子みこは十月三日御元服し給ひて、久明の親王と聞こゆめり。同じき十日の日、院よりやがて六波羅の北の方、さきざきも宮の渡り給ひし所へおはして、それよりぞあずまに赴かせ給ふ。
武士を夷ということの考 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
して「びるぜん・まりや」の御子みこ、なべての人の苦しみと悲しみとをおのがものの如くに見そなはす、われらが御主「ぜす・きりしと」は、遂にこの祈りを聞き入れ給うた。見られい。
奉教人の死 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
その要文をここに略記すれば、日の神の御子みこの一人にオトヂキョというのがあった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
此は古い信仰上の結婚の形が、此時代まで残っているのであって、尊い御子みこが幼い間は、やや年上の女人が傍にいて養育し、成長して後其御子と結婚した、宗教上の風習の名残である。
反省の文学源氏物語 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
寵姫を母とした御子みこを早く御覧になりたい思召おぼしめしから、正規の日数が立つとすぐに更衣母子おやこを宮中へお招きになった。小皇子しょうおうじはいかなる美なるものよりも美しいお顔をしておいでになった。
源氏物語:01 桐壺 (新字新仮名) / 紫式部(著)
さて翌年よくねん正月元日しょうがつがんじつあさ、おきさきはいつものように御殿ごてんの中をあるきながら、おうまや戸口とぐちまでいらっしゃいますと、にわかにお産気さんけがついて、そこへ安々やすやすうつくしいおとこ御子みこをおみおとしになりました。
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「父の名、御子みこの名、精霊の名を以て祝福します。お帰りなさい。」
*ラーオメドーンの御子みこよ起て、かの原上に降り行き、 250
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
日の御子みこむかふる足る日と信濃なる富士見の里にわれはめざめぬ
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
「神の御子みこではありません。この島に住んでいる人の子です」
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
神々しく浄められたる御子みこ御足みあしのもとに
また魚とならば、御子みこ頭字かしらじかたどりもし
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
れまさむあが御子みこ益荒男ますらをならば
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
客の僧は、後醍醐の御子みこ尊澄そんちょう宗良むねなが親王)であった。すがすがと、痩せてお若く、和歌のおすきな、あの法親王なのである。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「わたくしは國の神でサルタ彦の神という者です。天の神の御子みこがお降りになると聞きましたので、御前みまえにお仕え申そうとして出迎えております」
もうすもかしこけれど、お婿様むこさまは百だい一人ひとりわれる、すぐれた御器量ごきりょう御子みこまたきさきは、しとやかなお姿すがたうち凛々りりしい御気性ごきしょうをつつまれた絶世ぜっせい佳人かじん
下界の動乱の亡者もうじゃたちに何かを投げつけるような、おおらかな身振りをしていて、若い小さい処女のままの清楚せいその母は、その美しく勇敢な全裸の御子みこに初い初いしく寄り添い
俗天使 (新字新仮名) / 太宰治(著)
母は源氏が年いってからの三番目の北の方で、朱雀院の御子みこ女三宮おんなさんのみやである。源氏の若い頃、藤壺女御との間にあった過ちと同様、内大臣の長男柏木と女三宮との間に生れた子である。
反省の文学源氏物語 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
やや似た境遇にある者でイタカという部曲かきべがあったこと、それから推して行くと上代において板挙と書き、後々市女いちめまたは一の御子みこなどと呼ばれた、神に仕える一種の女性があったのも
その人のお生みした女三にょさんみや御子みこの中のだれよりも院はお愛しになった。
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
討手うって追撃ついげきを受けて宮は自害し給い、神器のうち宝剣ほうけんと鏡とは取り返されたが、神璽しんじのみは南朝方の手に残ったので、楠氏越智おち氏の一族さらに宮の御子みこ二方ふたかたほうじて義兵を挙げ、伊勢いせから紀井きい
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「あ、ありがとう。か、神の御子みこよ……」
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
また魚とならば、御子みこ頭字かしらじかたどりもし
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
あの御子みこは、ちょうどとりでが火を
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
あが御子みこむる時弓絃ゆづる響きて
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
御子みこが、蝦夷えびすの娘と、馬糧倉の中で、昼間から、歌垣うたがきのように、くわりしておられた。——相手もあろうによ、女奴と」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その竹の末を押しなびかせるように、八絃の琴を調べたように、天下をお治めなされたイザホワケの天皇の皇子のイチノベノオシハの王の御子みこです。
光君は桐壺帝の二番目の御子みこで、帝が次の天子の位にけたい、と考えられた程可愛くお思いになっていたが、いろんな関係でそれが出来なかったので、臣下の位に下げ、源の姓を与えられた。
反省の文学源氏物語 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
嗚呼あめ御裔みすゑ御子みこ大神おほがみ
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
キリストス、神の御子みこ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
それいらい「さすがは違う」「やはり後醍醐の御子みこよ」と、急に心をうごかされて、宮への随身を思い出した若僧が少なからずあったという。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この子はアシの船に乘せて流してしまいました。次に淡島あわしまをお生みになりました。これも御子みこの數にははいりません。
後深草にも御子みこはある。御失望はいうまでもない。かくてこの時を境に、朝廷の臣まで、二派に割れてしまったのだった。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(その王子の作れる矢は、今時の矢なり。そを穴穗箭といふ。)穴穗の御子みこ軍を興して、大前小前の宿禰の家をかくみたまひき。ここにそのかなと一八に到りましし時に大氷雨ひさめ降りき。
身をいとしんで、珠の御子みこを産めと、彼女は実家やどへさげられた。すると或る日、兄の行房が来て、ひそかに妹へ「おろしたがよい」とすすめた。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この倭建の命、伊玖米いくめの天皇が女、布多遲ふたぢ伊理毘賣いりびめの命に娶ひて生みませる御子みこ帶中津日子たらしなかつひこの命一柱。またその海に入りましし弟橘おとたちばな比賣の命に娶ひて生みませる御子、若建わかたけるの王一柱。
「……申さば、あどけない御子みこやら皇女がたで、罪も知らず、みな別れ別れ、他家に預けられておいでなのです。どうか、それらの幼いお方には」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれど、父皇の老いの影や、過去半生の真の御苦労さなどをよく知る者は、やはり御子みこの後醍醐にく君はなかった。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)