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はし
ふりがな文庫
“
嘴
(
はし
)” の例文
と鸚鵡のかたへ首さしいだしていうに、姉君憎むちょう鳥は、まがりたる
嘴
(
はし
)
を開きて、「さならずや、さならずや」と繰り返しぬ。
文づかい
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
南の枝にも梢にも、残る葉はなくて、
黄葉
(
こうよう
)
は唯北方に密集して居る。其裸になった梢に、
嘴
(
はし
)
の大きな
痩鴉
(
やせがらす
)
が一羽とまって居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
この影がさしたら、四ツ目あたりに咲き掛けた紅白の
牡丹
(
ぼたん
)
も曇ろう。……
嘴
(
はし
)
を鳴らして、ひらりひらりと縦横無尽に踊る。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
兵粮方
(
ひょうろうかた
)
の親族に死なれ、それから
已
(
やむ
)
を得ず再び玄関を
開
(
ひら
)
くと、
祝融
(
しゅくゆう
)
の神に憎まれて
全焼
(
まるやけ
)
と相成ったじゃ、それからというものは
為
(
す
)
る事なす事
鶍
(
いすか
)
の
嘴
(
はし
)
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
全く死滅しないまでも
山椒魚
(
さんしょううお
)
か
鴨
(
かも
)
の
嘴
(
はし
)
のような珍奇な存在としてかすかな生存をつづけるに過ぎないであろう。
俳句の型式とその進化
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
▼ もっと見る
往きに
臍
(
へそ
)
の近所が氷りつきそうであった事を思い出しつつ、今か今かと冷たい足を運んで行ったが、
鶍
(
いすか
)
の
嘴
(
はし
)
と
善
(
い
)
い方へばかり、食い違って、行けば行くほど、水が浅くなる。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ひもじきかさらば
食
(
は
)
めよと、一つ
掌
(
て
)
に牛の
乳
(
ち
)
盛れば、子鴉はみぎりより来て、犬の子は左より来て、
嘴
(
はし
)
と口つつき合せて、
啄
(
つつ
)
き嘗め、啄き嘗めつす。また、そねみ、惜み、にくまず。
雀の卵
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
ただ片恋の方向が、まず医者から令嬢へ、やがて令嬢から医者へと、イスカの
嘴
(
はし
)
になっているだけで、最後に病身になった令嬢が母と二人で静養に出かけるところも同工異曲といえる。
チェーホフ序説:――一つの反措定として――
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
つる
嘴
(
はし
)
、手袋「かてえなあ」傍に、郵便局電信配達だまりあり、赤い自転車、若いもの、一人が犬と遊んで居る。つとのって出かける、五分位に一人二人出かける。「おい百××番地知らないか」
日記:13 一九二七年(昭和二年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「さっそくの迎え、うれしいぞ。……笑うべし、かねがねの
細
(
こま
)
やかなる
謀
(
はかり
)
も、いすかの
嘴
(
はし
)
と食いちがい、かくの如く、俄か
落人
(
おちゅうど
)
とはなって、昨夜、ひそかに大内を脱け出てまいった。たのむぞよ」
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
うつばりに黄なる
嘴
(
はし
)
五つ鳴く雛に痩せて出で入る
親燕
(
おやつばめ
)
あはれ
礼厳法師歌集
(新字旧仮名)
/
与謝野礼厳
(著)
うとまるるわれになつける文鳥の
嘴
(
はし
)
のいたづら笑みて
愛
(
いと
)
しむ
遺愛集:02 遺愛集
(新字新仮名)
/
島秋人
(著)
嘴
(
はし
)
と嘴
疾
(
と
)
く動きつゝま
つ
(
ツ
)
黒の鸚鵡の舌はまるまりて見ゆ
河馬
(旧字旧仮名)
/
中島敦
(著)
煙管
(
きせる
)
に
嘴
(
はし
)
をつゝかれて、
心無
(
こゝろなし
)
には嘲けられ
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
山雀の
嘴
(
はし
)
をたたきし板びさし
寒林小唱
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
鴨
(
かも
)
の
嘴
(
はし
)
よりたら/\と春の
泥
(
どろ
)
五百句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
第十二回 いすかの
嘴
(
はし
)
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
と鸚鵡のかたへ
首
(
こうべ
)
さしいだしていふに、姉君憎むてふ鳥は、まがりたる
嘴
(
はし
)
を開きて、「さならずや、さならずや」と繰返しぬ。
文づかひ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
ツツと
笊
(
ざる
)
の目へ
嘴
(
はし
)
を入れたり、
颯
(
さっ
)
と引いて横に飛んだり、飛びながら上へ
舞立
(
まいた
)
ったり。そのたびに、笊の中の仔雀のあこがれようと言ったらない。
二、三羽――十二、三羽
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ひもじきかさらば
食
(
を
)
せよと、一つ
掌
(
て
)
に牛の
乳
(
ち
)
盛れば、子鴉はみぎりより来て、犬の子は左よりきて、
嘴
(
はし
)
と口つつき合せて、
啄
(
つつ
)
き
嘗
(
な
)
め、啄き嘗めつす。また、そねみ、惜み、にくまず。
観相の秋
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
淡緑色の大きな眼球に蚊の
嘴
(
はし
)
程の
繊
(
ほそ
)
く鋭い而してじいと人を見詰むる
瞳
(
ひとみ
)
を点じた
凄
(
すご
)
い眼、黒く鋭い
口嘴
(
くちばし
)
、Vice の様な其両手、
剖
(
さ
)
いて見れば黒い虫の様に
蠢
(
うごめ
)
く腸を満たしたふくれ腹
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
是非なく、今晩二人の不義者を殺し、其の場を去らず切腹なし、殿様の難義をお救い申そうと思うた事は
鶍
(
いすか
)
の
嘴
(
はし
)
と
喰違
(
くいちが
)
い、とんでもない間違をいたしました、主人の為に
仇
(
あだ
)
を討とうと思ったに
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
唇
(
くち
)
うつしに
飯
(
いひ
)
食む文鳥の
嘴
(
はし
)
紅
(
あか
)
く与ふる
都度
(
つど
)
に啼き乞ひて
愛
(
かな
)
し
遺愛集:02 遺愛集
(新字新仮名)
/
島秋人
(著)
煙管
(
きせる
)
に
嘴
(
はし
)
をつゝかれて、
心無
(
こころなし
)
には嘲けられ
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
長い
嘴
(
はし
)
のさきまで
籠
(
こも
)
っている。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
嘴
(
はし
)
ふりさけし
艸千里
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
恁
(
こ
)
う、
嘴
(
はし
)
を伏せ、
翼
(
はね
)
をすぼめ、あとじさりに、目を据ゑつゝ、あはれに
悄気
(
しよげ
)
て、ホ、と寂しく、ホと弱く、ポポーと真昼の夢に
魘
(
うな
)
されたやうに鳴く。
玉川の草
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
└鶴と云へどひもじきものか松ヶ根の
凍
(
こご
)
れる苔に
嘴
(
はし
)
つけにけり (改作)
雀の卵
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
面会の母を待ち佗び文鳥を
掌
(
て
)
に呼び
嘴
(
はし
)
のいたづらに笑む
遺愛集:02 遺愛集
(新字新仮名)
/
島秋人
(著)
嘴
(
はし
)
をとぎゐし
短歌集 日まはり
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
総じて寝ていても口を結んだ奴は、
蓋
(
ふた
)
をした貝だと思え。うかつに
嘴
(
はし
)
を入れると最後、大事な舌を挟まれる。やがて
意地汚
(
いじきたな
)
の野良犬が来て
舐
(
な
)
めよう。
紅玉
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
嘴
(
はし
)
ほそき鶴の一羽は見上げたり雪の
気霧
(
けき
)
らふ空の暗みを (二三六頁)
文庫版『雀の卵』覚書
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
此奴
(
こいつ
)
ら、大地震の時は弱ったぞ——
啄
(
ついば
)
んで、
嘴
(
はし
)
で、仔の口へ、
押込
(
おしこ
)
み
揉込
(
もみこ
)
むようにするのが、
凡
(
およ
)
そ
堪
(
たま
)
らないと言った形で、
頬摺
(
ほおず
)
りをするように見える。
二、三羽――十二、三羽
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
┌白妙の丹頂の鶴やるせなく地の淡雪に
嘴
(
はし
)
つけにけり (原作)
雀の卵
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
煙
(
けむり
)
にかいふいて
遁
(
に
)
ぐるにあらず、
落着
(
おちつ
)
き
澄
(
す
)
まして、
人
(
ひと
)
を
刺
(
さ
)
さむと、
鋭
(
するど
)
き
嘴
(
はし
)
を
鳴
(
な
)
らすのである。
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
ニツケルの
産科
(
さんくわ
)
の
器械
(
きかい
)
鵞
(
が
)
のごとき
嘴
(
はし
)
して
光
(
ひか
)
り
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
道理こそ、人の目と、その
嘴
(
はし
)
と
打撞
(
ぶつか
)
りそうなのに驚きもしない、と見るうちに、
蹈
(
ふま
)
えて
留
(
とま
)
った小さな脚がひょいと片脚、幾度も下へ離れて
辷
(
すべ
)
りかかると、その時はビクリと
居直
(
いなお
)
る。
二、三羽――十二、三羽
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
紅
(
あか
)
き
嘴
(
はし
)
ある小鳥らのゆるきさへづり。
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
二の烏 いや、まだ
然
(
そ
)
うは成るまいか。此の歯をくひしばつた
処
(
ところ
)
を見い。総じて寝て居ても口を結んだ奴は、
蓋
(
ふた
)
をした貝だと思へ。うかつに
嘴
(
はし
)
を入れると最後、大事な舌を挟まれる。
紅玉
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
黄の、
嘴
(
はし
)
の、そよろ
化粧毛
(
けはひげ
)
。
海豹と雲
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
この
一雫
(
ひとしずく
)
が身に染みたら、
荒鷲
(
あらわし
)
の
嘴
(
はし
)
に貫かれぬお雪の五体も裂けるであろう。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
嘴
(
はし
)
にまたあかき
実
(
み
)
を
塗
(
ぬ
)
る
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
つれ/″\には
名
(
な
)
を
呼
(
よ
)
んで、
翼
(
つばさ
)
を
撫
(
な
)
でもし、
膝
(
ひざ
)
に
抱
(
だ
)
きもし、
頬
(
ほゝ
)
もあて、
夜
(
よる
)
は
衾
(
ふすま
)
に
懷
(
ふところ
)
を
開
(
ひら
)
いて、
暖
(
あたゝか
)
い
玉
(
たま
)
の
乳房
(
ちぶさ
)
の
間
(
あひだ
)
に
嘴
(
はし
)
を
置
(
お
)
かせて、すや/\と
寐
(
ね
)
ることさへあつたが、
一夜
(
あるよ
)
、
凄
(
すさま
)
じき
寒威
(
かんい
)
を
覺
(
おぼ
)
えた。
雪の翼
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
魚
(
うを
)
より
獣
(
けもの
)
より
寧
(
むし
)
ろ
鳥
(
とり
)
の
嘴
(
はし
)
によく
肖
(
に
)
て
居
(
ゐ
)
る、
雀
(
すゞめ
)
か、
山雀
(
やまがら
)
か、さうでもない。
化鳥
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
コトコトと
嘴
(
はし
)
を鳴らし、
短夜
(
みじかよ
)
の明けた広縁には、ぞろぞろ
夥
(
おびただ
)
しい、
褐
(
かば
)
色の黒いのと、松虫鈴虫のようなのが、うようよして、ざっと障子へ
駆上
(
かけあが
)
って消えましたが、西瓜の
核
(
たね
)
が
化
(
な
)
ったんですって。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
見よ、見よ、鴉が
蔽
(
おお
)
いかかって、人の目、
頭
(
かしら
)
に、
嘴
(
はし
)
を鳴らすを。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
魚
(
うお
)
より獣よりむしろ鳥の
嘴
(
はし
)
によく肖ている。
化鳥
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“嘴(くちばし)”の解説
くちばし(嘴、喙、觜)とは、鳥類他の採食器官で、上下の顎が突出し、口周辺がひと繋がりの角質の板によって硬くなったもの。頭部の他の部分から滑らかに続くものもあるが、鳥類ではその間に区別がある。唇のような柔軟性がないが、硬いために突くなどする際には効果が大きい。一般には鳥のそれを指す。
(出典:Wikipedia)
嘴
漢検1級
部首:⼝
15画
“嘴”を含む語句
乳嘴
長嘴
親嘴
鴨嘴
白嘴鴉
鶴嘴
口嘴
砂嘴
嘴太
山嘴
一嘴
黄嘴紙
石塘嘴
硬嘴
肉嘴
船嘴
蝋嘴
鷹嘴
陸嘴
鳥嘴
...