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蹙
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しか
ふりがな文庫
“
蹙
(
しか
)” の例文
「またお講釈だ。ちょいと話をしている間にでも、おや、また教えられたなと思う。あれが苦痛だね。」
一寸
(
ちょっと
)
顔を
蹙
(
しか
)
めて話し続けた。
独身
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
お定は顏を赤くしてチラと周圍を見たが、その儘返事もせず
俯
(
うつむ
)
いて了つた。お八重は顏を
蹙
(
しか
)
めて、忌々し氣に忠太を横目で見てゐた。
天鵞絨
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
卯平
(
うへい
)
は
窪
(
くぼ
)
んだ
目
(
め
)
を
蹙
(
しか
)
めるやうにした。
勘次
(
かんじ
)
は
放心
(
うつかり
)
した
自分
(
じぶん
)
の
懷
(
ふところ
)
の
物
(
もの
)
を
奪
(
うば
)
はれた
程
(
ほど
)
の
驚愕
(
きやうがく
)
と
不快
(
ふくわい
)
との
目
(
め
)
を
以
(
もつ
)
て
卯平
(
うへい
)
とおつたとを
見
(
み
)
た。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
学士は青々とした遠い果で、鳥が段々小さくなつて消えてしまふのを、顔を
蹙
(
しか
)
めて見てゐて、自ら慰めるやうに、かう思つた。
笑
(新字旧仮名)
/
ミハイル・ペトローヴィチ・アルチバシェッフ
(著)
「そんな藥は毒にもならん代り利きやせん。」と、辰男はぶる/\
慄
(
ふる
)
へながら、顏を
蹙
(
しか
)
めた妹の苦しげな樣を見下ろしてゐた。
入江のほとり
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
▼ もっと見る
「わっしは鍵をかけておくのが必要だと思うんです。」ムシュー・ドファルジュはロリー氏の耳のもっと近くで囁いて、ひどく顔を
蹙
(
しか
)
めた。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
少し
腫
(
むく
)
みのある顔を悲しそうに
蹙
(
しか
)
めながら、そっと腰の
周囲
(
まわり
)
をさすっているところは男前も何もない、血気盛りであるだけかえってみじめが深い。
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
少ない白髮を
茶筅髮
(
ちやせんがみ
)
にした紫の被布を着た氣丈な婆さんに顏を
蹙
(
しか
)
め手を振つて
邪慳
(
じやけん
)
に斷られての歸途、圭一郎は幾年前の父の言葉をはたと思ひ出し
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
蹙
(
しか
)
め顏の放心状態から我にかへつて、彼は私に眼を向けたが、その
額
(
ひたひ
)
の曇はすつかり消えてしまつたやうに見えた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
その足音はたしかに硝子戸に近づいて来る。オオビュルナンは覚えず居ずまいを直して、
蹙
(
しか
)
めた顔を元に戻した。
田舎
(新字新仮名)
/
マルセル・プレヴォー
(著)
そんな事件が起つた時は、一同顔を
蹙
(
しか
)
めて黙つてゐる。只波の音と、機関の音とが聞えるばかりである。
樺太脱獄記
(新字旧仮名)
/
ウラジミール・ガラクティオノヴィチ・コロレンコ
(著)
「……いつどこで逢っても眉ひとつ
蹙
(
しか
)
めていたことがない、愚痴をこぼすではなし泣言を言うではなし」
足軽奉公
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
唯社説記者ポトリヤソウスキイ丈は、顔を
蹙
(
しか
)
めて隅の方に据わつた儘、起つて杯を打ち合せに来ようともしない。その上ちよつと編輯長を睨んで、少し唇を動かした。
板ばさみ
(新字旧仮名)
/
オイゲン・チリコフ
(著)
老僕
(
ろうぼく
)
額
(
ひたい
)
を
蹙
(
しか
)
め、
有
(
あ
)
り有り、
大変
(
たいへん
)
が有りたりという。先生手を
挙
(
あ
)
げて、そは
姑
(
しば
)
らく
説
(
と
)
くを
休
(
や
)
めよ、我まずこれを言わん、
浮浪
(
ふろう
)
の
壮士
(
そうし
)
が
御老中
(
ごろうじゅう
)
にても
暗殺
(
あんさつ
)
せしにはあらざる
歟
(
か
)
と。
瘠我慢の説:05 福沢先生を憶う
(新字新仮名)
/
木村芥舟
(著)
然はれそは一瞬の間にして、身の在るところを顧み、四邊なる男等の
蹙
(
しか
)
みたる顏付を見るに及びては、我魘夢の儼然として
動
(
うごか
)
すべからざる事實なるを認めざることを得ざりき。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
近隣
(
となり
)
の水を当座は貰つて使つたが、何れも似寄つた赤土水である。墓向ふの家の水を貰ひに往つた女中が、井を
覗
(
のぞ
)
いたら
芥
(
ごみ
)
だらけ虫だらけでございます、と顔を
蹙
(
しか
)
めて帰つて来た。
水汲み
(新字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
近隣の水を
当座
(
とうざ
)
は
貰
(
もら
)
って使ったが、何れも
似寄
(
によ
)
った赤土水である。墓向うの家の水を貰いに往った女中が、井を
覗
(
のぞ
)
いたら
芥
(
ごみ
)
だらけ虫だらけでございます、と顔を
蹙
(
しか
)
めて帰って来た。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
此老人は
突
(
つか
)
れてより顔を
蹙
(
しか
)
むる間も無きうちに
事切
(
ことぎれ
)
と
為
(
な
)
りしなりと、
若
(
も
)
し真に顔を蹙むる間も無かりしとせば
如何
(
いか
)
にして
MONIS
(
モニシ
)
の五文字を
其
(
その
)
床
(
ゆか
)
に
書記
(
かきしる
)
せしぞ、
死
(
しぬ
)
るほどの傷を負い
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
と
薄痘痕
(
うすいも
)
のある
蒼
(
あお
)
い顔を
蹙
(
しか
)
めながら即効紙の
貼
(
は
)
ってある左右の
顳顬
(
こめかみ
)
を、縫い物捨てて両手で
圧
(
おさ
)
える女の、齢は二十五六、眼鼻立ちも醜からねど
美味
(
うま
)
きもの食わぬに
膩気
(
あぶらけ
)
少く
肌理
(
きめ
)
荒れたる
態
(
さま
)
あわれにて
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
蹙
(
しか
)
んだ客の顔色も晴やかになったものだ。725
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
判官達は顔を
蹙
(
しか
)
めて、顔を見合わしたが
富貴発跡司志
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
みだれ姿の影黒み
蹙
(
しか
)
める空を
翔
(
かけ
)
りゆかむ
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
おつぎが
忙
(
いそが
)
しくどさりと
臼
(
うす
)
へ
落
(
おと
)
したふかしからぼうつと
白
(
しろ
)
い
蒸氣
(
ゆげ
)
が
立
(
た
)
つた。
其
(
そ
)
の
蒸氣
(
ゆげ
)
の
中
(
なか
)
に
月
(
つき
)
が一
瞬間
(
しゆんかん
)
目
(
め
)
を
蹙
(
しか
)
めて
直
(
すぐ
)
につやゝかな
姿
(
すがた
)
に
成
(
な
)
つた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
「そんな薬は毒にもならん代り利きやせん」と、辰男はぶるぶる
慄
(
ふる
)
えながら、顔を
蹙
(
しか
)
めた妹の苦しげな様を見下していた。
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
途方もない
蹙
(
しか
)
め
面
(
つら
)
に顔を
痙攣
(
ひきつ
)
らせたりしながら笑いこけていると、スクルージの姪に当るその妻もまた彼と同様にきゃっきゃっと心から笑っていた。
クリスマス・カロル
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
罪人は諦めたような風で、大股に歩いて這入って来て眉を
蹙
(
しか
)
めてあたりを見廻した。戸口で一秒時間程
躊躇
(
ちゅうちょ
)
した。
罪人
(新字新仮名)
/
ミハイル・ペトローヴィチ・アルチバシェッフ
(著)
朝飯
(
あさめし
)
と
午餉
(
ひるめし
)
とを一つに片付けたる
兼吉
(
かねきち
)
が、
浴衣
(
ゆかた
)
脱捨てて引つ掛くる衣は
紺
(
こん
)
にあめ入の
明石
(
あかし
)
、
唐繻子
(
とうじゅす
)
の丸帯うるささうに
締
(
し
)
め
畢
(
おわ
)
り、
何処
(
どこ
)
かけんのある顔の
眉
(
まゆ
)
蹙
(
しか
)
めて
そめちがへ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
汚
(
よご
)
した顏、亂れた服裝(彼の
上衣
(
うはぎ
)
は、まるで取つ組み合でもして背中から裂けてしまつたかのやうにだらりと腕から垂れ下つてゐた)、絶望したやうな、
蹙
(
しか
)
め顏
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
と
薄痘痕
(
うすいも
)
のある蒼い顔を
蹙
(
しか
)
めながら即効紙の貼つてある左右の
顳顬
(
こめかみ
)
を、縫ひ物捨てゝ両手で圧へる女の、齢は二十五六、眼鼻立ちも醜からねど
美味
(
うま
)
きもの食はぬに
膩気
(
あぶらけ
)
少く
肌理
(
きめ
)
荒れたる態あはれにて
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
あなたは顔を
蹙
(
しか
)
めて、陰気な目をして
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
「おゝ
痛
(
いて
)
えまあ」と
顏
(
かほ
)
を
蹙
(
しか
)
めて
引
(
ひ
)
かれる
儘
(
まゝ
)
に
首
(
くび
)
を
傾
(
かたぶ
)
けていつた。
亂
(
みだ
)
れた
髮
(
かみ
)
の
三筋
(
みすぢ
)
四筋
(
よすぢ
)
が
手拭
(
てぬぐひ
)
と
共
(
とも
)
に
強
(
つよ
)
く
引
(
ひ
)
かれたのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
木村は何か読んでしまって、
一寸
(
ちょっと
)
顔を
蹙
(
しか
)
めた。大抵いつも新聞を置くときは、
極
(
ごく
)
apathique
(
アパチック
)
な表情をするか、そうでなければ、顔を蹙めるのである。
あそび
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
そのじっと見入った眼付はだんだんと深まって、嫌悪と疑惑との
蹙
(
しか
)
め顔となり、恐怖の色をさえ
交
(
まじ
)
えた。そういう奇妙な表情を浮べたまま彼の思いは彼からふらふらと脱け出ていたのだ
★
。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
「それがなんになるものか」と、学士は顔を
蹙
(
しか
)
めて云つた。
笑
(新字旧仮名)
/
ミハイル・ペトローヴィチ・アルチバシェッフ
(著)
丁度
Titanos
(
チタノス
)
が岩石を砕いて、それを天に
擲
(
なげう
)
とうとしているのを、傍に
尖
(
とが
)
った帽子を
被
(
かぶ
)
った一寸坊が見ていて、顔を
蹙
(
しか
)
めて笑っているようなものである。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
眉を
蹙
(
しか
)
めて一心不乱の顔をしながら、仕事にすっかり夢中になっているので、自分の杯を取ろうと差し伸べる手に眼をくれさえしないくらいで、——その手は、脣へ持ってゆく杯に当るまでには
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
木村は同僚の顔を見て、一寸顔を
蹙
(
しか
)
めたが、すぐにまた晴々とした顔になって、為事に掛かった。
あそび
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
末造は覚えず
蹙
(
しか
)
めていた顔を、又覚えず晴やかにせずにはいられなかった。「いいえじゃあないぜ。困っちまう。どうしよう。どうしようと、ちゃんと顔に書いてあらあ」
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
純一は顔を
蹙
(
しか
)
めた。そして作者の
厭世
(
えんせい
)
主義には多少の同情を寄せながら、そのカトリック教を唯一の退却路にしているのを見て、因襲というものの根ざしの強さを感じた。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
木村は少しうるさいと思ったらしく顔を
蹙
(
しか
)
めたが、直ぐ思い直した様子でこう云った。
食堂
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
それに今日に限つて、いま妻が
鵇色
(
ときいろ
)
の長襦袢を脱いで、
余所
(
よそ
)
行の白
縮緬
(
ちりめん
)
の腰巻を取るなと想像する。そして細君の白い肌を想像する。
此
(
この
)
想像が
非道
(
ひど
)
く不愉快であるので、
一寸
(
ちよつと
)
顔を
蹙
(
しか
)
める。
魔睡
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
箱根湯本の柏屋という温泉宿の
小座舗
(
こざしき
)
に、純一が独り顔を
蹙
(
しか
)
めて据わっている。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「はてな。あれから塾へは帰られませんが。」椿庭はこういって
眉
(
まゆ
)
を
蹙
(
しか
)
めた。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
木村は馬鹿々々しいと思って、
一寸
(
ちょっと
)
顔を
蹙
(
しか
)
めたくなったのをこらえている。
あそび
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
始終にやにや笑っていた主人の大野が顔を
蹙
(
しか
)
めた。
独身
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
忽ち顔を
蹙
(
しか
)
めて記録を手から
釈
(
お
)
いた事がある。
魔睡
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
蘭軒はこれを聞いて眉を
蹙
(
しか
)
めた。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
秀麿は顔を
蹙
(
しか
)
めた。
かのように
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
蹙
漢検1級
部首:⾜
18画
“蹙”を含む語句
顰蹙
窘蹙
一顰一蹙
打蹙
窮蹙
蹙縮然
蹙足爺
蹙面