裏町うらまち)” の例文
うらみにでもおもふだけがおまへさんが未練みれんでござんす、裏町うらまち酒屋さかやわかものつておいでなさらう、二やのおかくしんから落込おちこんで、かけさきのこらず使つか
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
裏町うらまち表通おもてどほり、いましむる拍子木ひやうしぎおとも、いしむやうにきしんで、寂然しんとした、臺所だいどころで、がさりと陰氣いんきひゞく。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そこで彼等はまず神田の裏町うらまちに仮の宿を定めてから甚太夫じんだゆうは怪しいうたいを唱って合力ごうりきを請う浪人になり、求馬もとめ小間物こまものの箱を背負せおって町家ちょうかを廻る商人あきゅうどに化け
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
道子みちこはアパートに出入でいりする仕出屋しだしやばあさんのすゝめるがまゝ、戦後せんご浅草あさくさ上野辺うへのへん裏町うらまち散在さんざいしてゐるあや旅館りよくわん料理屋れうりや出入でいりしておきやくりはじめた。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
そこから、ひろい、大通おおどおりをまっすぐにゆけば、やはりにぎやかだったが、裏町うらまちほうへゆくみちは、前後ぜんごとも、火影ほかげすくなくなって、くらく、みぞのくぼみのように、さびしげにさえられました。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ジョバンニがいきおいよく帰って来たのは、ある裏町うらまちの小さな家でした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
学校の帰り道には毎日のやうに待乳山まつちやま境内けいだい待合まちあはせて、人の知らない山谷さんや裏町うらまちから吉原田圃よしはらたんぼを歩いた………。あゝ、おいと何故なぜ芸者なんぞになるんだらう。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
あなのやうな眞暗まつくら場末ばすゑ裏町うらまちけて、大川おほかはけた、近道ちかみちの、ぐら/\とれる一錢橋いちもんばしふのをわたつて、土塀どべいばかりでうちまばらな、はたけいけ所々ところ/″\侍町さむらひまち幾曲いくまがり、で
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……裏町うらまち横通よこどほりも、物音ものおとひとつもきこえないで、しづまりかへつたなかに、彼方此方あちらこちらまどから、どしん/\と戸外おもて荷物にもつげてる。此處こゝはうかへつておしつゝまれたやうにはげしくえた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)