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筆なる者は罪もなく殊に孝心な者故助けいとて訴え出でたる幸十郎はと神妙の至りで有る、筆とがめも申し付けべき処なれども
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
僧はねんごろに道を教ふれば、横笛に嬉しく思ひ、禮もいそ/\別れ行く後影うしろかげ、鄙には見なれぬ緋の袴に、夜目にも輝く五柳の一重ひとへ
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
母上兄妹けいまいつつがなきを喜びて、さて時ならぬ帰省の理由かくかくと述べけるに、兄はと感じ入りたるていにて始終耳を傾け居たり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
見張りはじめてより幾程いくほども無く余は目科の振舞にと怪しくかつ恐ろしげなる事あるを見てうせろくな人にはあらずと思いたり、其事はほかならず
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
両様りやうやうともくはしく姿すがたしるさゞれども、一読いちどくさい、われらがには、東遊記とういうきうつしたるとおなさまえてゆかし。
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかれども永遠より永遠に至るまで我の所有し得べきものは神なり、人霊の価値はと高き神より以下のものを以て満足し能わざるにあり、しかして
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
彼の「のりなればともかしこし鶯の宿はと問はばいかに答へむ」という故事のあったために鶯宿梅の名も生じ
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
侍従にもようせぬと案じ悩んでいるが……。わしが思案では、重きが上の小夜衣——きぬ小袖こそでを幾つか重ねて送れという謎かと見た。それならばと安いこと。
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
旧幕府の末年に神田孝平氏が府下本郷通を散歩の折節おりふしたまたま聖堂裏の露店にと古びたる写本のあるを認め、手に取りて見ればまぎれもなき蘭学事始にして、かも鷧斎いさい先生の親筆に係り
蘭学事始再版序 (新字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
と、アンドレイ、エヒミチは滿足氣まんぞくげ微笑びせうして。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
此方こなたには具足櫃ぐそくびつがあつたり、ゆみ鉄砲抔てつぱうなど立掛たてかけてあつて、ともいかめしき体裁ていさい何所どこたべさせるのか、お長家ながやら、う思ひまして玄関げんくわんかゝ
士族の商法 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
君は元來英明にましませば、事今日あらんこと、かねてより悟らせ給ひ、神佛三寶に祈誓して御世みよを早うさせ給ひけるこそ、と有り難けれ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
老人の顔附はおだやかにしてえみを浮めしとも云うことに唇などは今しも友達に向いて親密なる話をはじめんとするなるかと疑わる、読者記臆せよ
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
宿屋の一室に端座たんざし、過去を思い、現在をおもんばかりて、深き憂いに沈み、婦女の身のとど果敢はかなきを感じて、つまらぬ愚痴ぐちに同志をうらむの念も起りたりしが、た思いかえして
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
之を撰び彼を捨つるの力を有せざれば、余は他人の奴隷となるべきものなり、心霊の貴重なるはその自立の性にあり、我ちいさきものといえどもいやしくも全能者と直接の交通を為し得べきものなり
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
相隨ひし人々の、入道と共に還りし跡には、やかたうちと靜にて、小松殿の側にはんべるものは御子維盛これもり卿と足助二郎重景のみ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
身は戸の口にたちまゝなるもまなこ室中しつじゅう馳廻はせまわれり、今まで絵入の雑誌などにて人殺ひとごろしの場所を写したる図などは見し事ありいずれにも其辺そのあたり取散とりちらしたる景色見えしに
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
洩さずにく知る人はありやなしやと思うがまゝ我儕おのれが日ごろおぼえたるかの八橋やつはし蜘手くもでなす速記法ちょうわざをもて圓朝ぬしが口ずからと滑らかに話しいだせる言の葉を
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その夜は大阪府警察署の拘留場こうりゅうばに入りたるに、船中の疲労やら、心痛やらにて心地悪ここちあしく、とど苦悶を感じおりしに、妾を護衛せる巡査は両人にて、一人は五十未満、他は二十五
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
此処こゝ一騎打いっきうち難所なんじょで、右手めてほうを見ると一筋ひとすじの小川が山のふもとめぐって、どうどうと小さい石を転がすようにすさまじく流れ、左手ゆんでかたを見ると高山こうざん峨々がゞとして実に屏風を建てたる如く
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)