斯様かやう)” の例文
旧字:斯樣
源氏の縁坐で斯様かやうの事も出来たのであるから、無暗むやみに将門をにくむべくも無い、一族の事であるからむし和睦わぼくしよう、といふのである。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
疑団ぎだん多き事件に就き取調べ候処、著述家の中には斯様かやうなる事実の有り得べきことを疑ふ者少からず候へども
しか此節このせつ門並かどなみ道具屋だうぐやさんがふえまして、斯様かやうしなだれ見向みむきもしないやうになりましたから、全然まるでがないやうなもんでげす、うもひど下落げらくをしたもんで。
士族の商法 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
けれどもちゝの本意が何処どこにあるかは、もとよりあきらかに知る機会を与へられてゐなかつた。彼は子として、ちゝの心意を斯様かやうに揣摩する事を、不徳義とは考へなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
けだ斯様かやうな翻訳の大量生産はさういふ風に資本家と文人とに幸福を与へるのみならず、また世界の大思想大文芸を、極めて低廉ていれんな値を以て万象に頒与はんよするのであるから
翻訳製造株式会社 (新字旧仮名) / 戸川秋骨(著)
うやら亜米利加アメリカの労働者などから、内々運動費を輸送し来るらしいので御座りまして、——し外国の勢力が斯様かやうなことから日本へ這入はひつて来るやうになりませうならば
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「長袖ながら、二言にごんは御座無く候。然れば、娘御の命か、泥烏須如来か、何れか一つ御棄てなさるる分別肝要と存じ候。」斯様かやう申し聞け候へば、篠、此度は狂気の如く相成り
尾形了斎覚え書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
斯様かやうな大々的御親征は、神武天皇の御東征以来、実に、八百年目である。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
あとの僕等と女画家ぢよぐわかとはドリヷル夫婦の自動車に相のりしてモンマルトルへ帰つた。文豪の誕生日の一を想ひけなく斯様かやうに面白く過ごしたのは栄誉である。うしてこの日は僕の誕生日でもあつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
今までの事を斯様かやうに書き綴り行く程に思ひの外に筆進まず。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
何かしら斯様かやうな感慨が始終胸の中を往来した。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
どうも誠に斯様かやう御名作ごめいさく出来できませんもので、じつ御名作ごめいさくで、天下てんか斯様かやうなおさく沢山たくさんにございますまい。
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
びんつたまゝつてへや四隅よすみつて、そこに一二滴づゝりかけた。斯様かやうきようじたあと白地しろぢ浴衣ゆかた着換きかえて、あたらしい小掻巻かいまきしたやすらかな手足てあしよこたへた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
仮令たとひ斯様かやうになつても、だ人間には相違無いからネ」と、吾妻は首肯うなづき「かし、もう斯うなるからは、何卒どうぞ篠田にかほを見られない様にして貰ひたいのだが、其の論文にしても、 ...
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
斯様かやう、説得致し候へば、篠も流石さすがに、推してとも申し難く、其儘凄々すごすご帰宅致し候。
尾形了斎覚え書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
斯様かやうなことを口走つたかとも思はれる。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
わたくし負傷けがいたしますとおとつさんいたうないかとつていたはつてれます、わたくし心得違こゝろえちがひから斯様かやう零落れいらくいたし、までつぶれまして、ソノんにも知らぬ頑是ぐわんぜのないせがれ
落付おちついて考へれば、考へははちすいとを引く如くにるが、出たものを纏めてると、ひとおそろしがるものばかりであつた。仕舞には、斯様かやうに考へなければならない自分がこわくなつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
只だ御互に気を付けたいのは、斯様かやうなる紛擾ごた/\の時に真実、神の子らしく、基督キリストの信者らしく謙遜けんそん柔和にうわに、しゆの栄光をあわはすことです——私の名が永阪教会の名簿にると無いとは
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
しかるに当今たうこんいたつては寄席商売よせしようばいふものが大層たいそうえて、斯様かやう隆盛りゆうせい相成あひなつたのでござります。
落語の濫觴 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
また平仄ひやうそくひませんければなりません、どうも斯様かやうなものを詩だといつてお持ちあそばすと、かみ御恥辱ごちじよく相成あひなります事ゆゑに、これはおとゞまりあそばしたはうよろしうございませう。
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
誠にどうもお仕立したてまうし、お落着おちつきのある流石さすが松花堂しようくわだうはまた別でございます、あゝ結構けつこう御品おしなで、斯様かやうなお道具だうぐ拝見はいけんいたすのは私共わたくしども修業しゆげふ相成あひなりますとつて、卑下ひげするんだ。
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
へい/\もう姓名なまへまうすのは、おはづかしうてまうせませぬが、斯様かやう御親切ごしんせつうへげて、御飯ごぜんまでくださる貴方様あなたさまのことでございますから、かくさず申上まうしあげますが、わたくし芝片門前しばかたもんぜんりました