奉公人ほうこうにん)” の例文
「こんな小さなものがおやしきへあがって他人の間でもまれるんですもの。奉公人ほうこうにんも同じことです。ぼくがお父さんならことわってしまう」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それから、幾日いくにちかたってから、あには、まちにりっぱな商店しょうてんしました。そして、そこの帳場ちょうばにすわって、おおくの奉公人ほうこうにん使つか身分みぶんとなりました。
くわの怒った話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「いやだよ。おまえは、もううち奉公人ほうこうにんでもなけりゃ、あたしのともでもないんだから、ちっともはやくあたしのとどかないとこへえちまうがいい」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
うちにはへん奉公人ほうこうにんを置きまして、馬鹿ばかな者を愛して楽しんでゐるといふごく無慾むよくな人でございました。長
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
一年とさだめたる奉公人ほうこうにん給金きうきんは十二箇月のあひだにも十兩、十三月のあひだにも十兩なれば、一月はたゞ奉公ほうこうするか、たゞ給金きうきんはらふか、いづれにも一ぽうそんなり。其外そのほか不都合ふつがふかぞふるにいとまあらず。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
春琴の強情と気儘きままとはかくのごとくであったけれども特に佐助に対する時がそうなのであっていずれの奉公人ほうこうにんにもという訳ではなかった元来そういう素質があったところへ佐助が努めて意を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
つかはされず候につきよんどころなく御願ひ申あげむねうめ申聞候といふにぞ大岡殿粂之進くめのしんむかはれ斯樣かやう難儀なんぎいたす者を止置とめおき候事心得こゝろえずと申されしかば粂之進くめのしん冷笑あざわらすべ奉公人ほうこうにん主人にいとまねがふには人代ひとかはりを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その主人しゆじんに一ねん馴染なじみりの奉公人ほうこうにん少々せう/\無心むしんかぬとは申されまじ、此月末このつきずゑかきかへをきつきて、をどりの一りやう此處こゝはらへばまたつき延期のべにはなる、くいはゞよくたれど
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
村ではこれと今までの小昼こびるジュウハンと、べつべつに見ている人もまだ多いが、農家にもおいおい年季ねんき奉公人ほうこうにんがすくなく、日雇ひやといの働き手を入れるようになると、食べさせる物も一つになり
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
奉公人ほうこうにんがみなほめちぎっている。しかし正三は奉公人としてあがるんじゃない。ご三男様のお相手として万事ご三男様と同じ待遇たいぐうを受けるんだ。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
このみせ主人しゅじんは、やはり小僧こぞうからいま身代しんだい仕上しあげたひとだけあって、奉公人ほうこうにんたいしても同情どうじょうふかかったのでした。信吉しんきち病気びょうきにかかると、さっそく医者いしゃせてくれました。
風雨の晩の小僧さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
なりにけれ扨も享保きやうほ五年三月五日油屋五兵衞并びに同人家内は奉公人ほうこうにんに到るまで一人ものこらず呼出しと相成しかば家主五人組一同差添さしぞへ奉行所へ罷出まかりいづるに程なく白洲しらす呼込よびこみになり願人相手方とも居並ゐならびし時に大岡殿出座しゆつざ有て吟味ぎんみにこそは及ばれたり此大岡殿は吟味ぎんみせつ何時いつも目を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
仕事しごとはみな奉公人ほうこうにんがしてくれるし、かね銀行ぎんこうあずけておけば、利子りしがついて、ますます財産ざいさんえるというものだ。もうこんなくわなどを使つかうことはあるまい。まったく不要ふようなものだ。
くわの怒った話 (新字新仮名) / 小川未明(著)