黛色たいしょく)” の例文
越しかたかえりみれば、眼下がんかに展開する十勝の大平野だいへいやは、蒼茫そうぼうとして唯くもの如くまた海の如く、かえって北東の方を望めば、黛色たいしょく連山れんざん波濤はとうの如く起伏して居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
西を見れば、茶褐色にこがれた雑木山の向うに、濃い黛色たいしょくの低い山が横長く出没して居る。多摩川たまがわの西岸をふちどる所謂多摩の横山で、川は見えぬが流れのすじ分明ぶんみょうに指さゝれる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
湾をはなれて山路にかゝり、黒松内くろまつない停車ていしゃ蕎麦そばを食う。蕎麦の風味が好い。蝦夷えぞ富士〻〻〻〻と心がけた蝦夷富士を、蘭越らんごえ駅で仰ぐを得た。形容端正、絶頂まで樹木をまとうて、秀潤しゅうじゅん黛色たいしょくしたたるばかり。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)