黒烟くろけむり)” の例文
しかるにその子供は親よりもふとって、せいも高く、また脂ぎって艶々として色も真黒く、今を盛りに毒々しい黒烟くろけむりを吐いているのだと思った。また下に建てられた平屋も大きかった。
暗い空 (新字新仮名) / 小川未明(著)
大戦後の好景気に煽られた星浦製鉄所は、昼夜兼行の黒烟くろけむりを揚げていた。毎日の死傷者数名という景気で、数千人を収容する工場の到る処に、殺人的な轟音ごうおんと静寂とがモノスゴく交錯していた。
オンチ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そちこちで、はりさけるような女のさけび声がする、それから先はまるでむちゅうで須田町すだちょうの近くまで走って来たと思うと、いく手にはすでにもうもうと火事の黒烟くろけむりが上っていたと言っています。
大震火災記 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
ぽっ/\と黒烟くろけむりが立ち昇って、室内が煙で暗くなってゐます。
父八雲を語る (新字新仮名) / 稲垣巌(著)