黒布こくふ)” の例文
黒布こくふに覆われた物凄い棺桶、湯棺に代る最後の化粧、悲惨な断頭台の断末魔の光景がそれからそれと展開した。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
いろいろなちかいを立てさせられて、そこから助けだしてもらうと、ばばあは、頭にくろい頭巾ずきん、身に黒布こくふをまとわせられて、あたかも女修道士おんなイルマンのような姿となり
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と云ったかと思うと、悪鬼の女は頭の上から被っていた黒布こくふに手をかけるとサッと脱ぎ捨てた。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
明智は云いながらツカツカと黒衣の人物の前に進んで、いきなり覆面の黒布こくふをかなぐり捨てた。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「あッ!」と藤巻石弥ふじまきいしやも、同時にひとみをおさえて飛びしさる、とたんにすきをねらった老婆ろうばは、黒布こくふをひるがえしてドドドドドッと大廊下おおろうかから庭先へ飛びおりた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、そのほりぎわの木のかげから、ツイとはなれた人影ひとかげがあった。黒布こくふをかぶった妖婆ようばである。いうまでもなく、それは加茂かもどてから、三人のそうをつけてきた蚕婆かいこばばあ——
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
片隅でムクムク動いている者があれば、それは用意の黒布こくふを出して、顔の覆面や足拵あしごしらえにかかっている者で、中には腰の皎刀こうとうを抜き払って、刃こぼれをあらためている者がある。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)