麦飯むぎめし)” の例文
旧字:麥飯
ただ呼吸いきするだけならパンだけでもよい、パンでなくとも、握飯にぎりめしでも麦飯むぎめしでもよいけれども、この世に生きている甲斐かいには、なにか理想がなくてはならぬ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
かゝる無邪気の労力をもて我はわが胸中にわだかまりたる不平を抑へつ、疲れて帰る夜の麦飯むぎめしの味、今に忘れず、老畸人わが往事を説きて大に笑ふ時、われは頭を垂れて冥想す。
三日幻境 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
爾の手足は松のはだの如く荒るゝ共、爾の筋骨は鋼鉄を欺く。烈日れつじつもとに滝なす汗を流す共、野の風はヨリ涼しく爾を吹く。爾は麦飯むぎめしを食うも、夜毎に快眠を与えられる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「ほかじゃねえが、これから赤坂御門外へ行って、溜池ためいけ麦飯むぎめし茶屋を、洗ってくんねえ」
この山には古代の微生物の残骸が土のようになって、戸隠山へ寄った方に存するところがある。天狗の麦飯むぎめしだの、餓鬼の麦飯だのといって、この山のみではない諸処にある。浅間山観測所附近にもある。
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
新来のしろに見かえられて、間もなくくろは死に、白の独天下となった。畳から地へ下ろされ、麦飯むぎめし味噌汁みそしるで大きくなり、美しい、而して弱い、而して情愛の深い犬になった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)