鴎外おうぐわい)” の例文
或曇つた冬の日の午後、僕等は皆福間先生のひつぎ今戸いまどのお寺へ送つて行つた、お葬式の導師だうしになつたのはやはり鴎外おうぐわい先生の「二人ふたりの友」の中の「安国寺あんこくじさん」である。
二人の友 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
鴎外おうぐわい先生を主筆とせる「しがらみ草紙さうし」第四十七号に、謫天情僊たくてんじやうせん七言絶句しちごんぜつく、「読罪与罰上篇つみとばつじやうへんをよむ」数首あり。泰西たいせいの小説に題するの詩、嚆矢かうし恐らくはこの数首にあらんか。
僕は一高へはひつた時、福間ふくま先生に独逸ドイツ語を学んだ。福間先生は鴎外おうぐわい先生の「二人ふたりの友」の中のF君である。「二人の友」は当時はまだ活字になつてはいなかつたであらう。
二人の友 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
鴎外おうぐわい先生の短篇の如き、それらと同時に発表されし「冷笑」「うづまき」等の諸作に比ぶれば、今猶清新の気に富む事、昨日きのふ校正を済まさせたと云ふとも、差支さしつかへなき位ならずや。
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
いささこころよきを覚ゆ。床上「澀江抽斎しぶえちうさい」を読む。嘗て小説「芋粥いもがゆ」をさうせし時、「ほとんど全く」なる語を用ひ、久米に笑はれたる記憶あり。今「抽斎」を読めば、鴎外おうぐわい先生もまた「殆ど全く」の語を用ふ。