鳥越とりこえ)” の例文
それは鳥越とりこえの中村座であると教えられて、わたしはまたすぐに出かけると、きょうも午後から行ったので、芝居はもう三分の一ほど済んでいた。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
主婦「あのお前のう、ちょいと鳥越とりこえの鳶頭の処まで行ってくんな、用はきさえすれば解る………私がそういったから来ましたといえば解るんだよ」
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
鳥越とりこえの中村座など、激しい時代転歩にサッサと押流され、昔日せきじつの夢のあとはなくなってしまったが、堺町、葺屋町の江戸三座が、新吉原附近に移るにはがあった。
浅草田圃あさくさたんぼに夕陽が照り、鳥越とりこえの土手のむこうにならんだ蒲鉾かまぼこ小屋のあたりで、わいわいいうひと声。
顎十郎捕物帳:10 野伏大名 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
これより先明治三年の九月、房州の鈴木松塘もまた向柳原二丁目に卜居しその詩社を七曲吟社ななまがりぎんしゃと名づけた。浅草鳥越とりこえの辺から向柳原の地を俚俗りぞく七曲りと呼んだのに因ったのである。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その翌年の秋、わたしは鳥越とりこえの中村座で、彼が「伊賀越」の助平と幸兵衛を観たが、遠眼鏡の助平は図ぬけてかった。幸兵衛はどうもよろしくなかった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
和「まア少しお待ちなさい、今のお方は浅草鳥越とりこえ龜甲屋きっこうや幸兵衛こうべえ様というてわしの一檀家じゃ、なか/\の御身代で、苦労人の上に万事贅沢にして居られるから、お近附になって置くがい」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それは鳥越とりこえの中村座で川上の旗上げから洋行までの間のことである。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
その年の十一月、彼は浅草の鳥越とりこえに新築された猿若座の開場式に出勤して、「北条九代名家功ほうじょうくだいめいかのいさおし」を上演した。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
浅草あさくさ鳥越とりこえの中村座に旗上げをした
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)