魚籃ぎょらん)” の例文
その立退たちのき先をたずねて、それから三田の魚籃ぎょらんの知り人の立退き先をも見舞って、帰り路に半七はゆうべの勘蔵のことを云い出した。
半七捕物帳:29 熊の死骸 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
第二に、五月上旬、門へ打つ守り札を、魚籃ぎょらん愛染院あいぜんいんから奉ったのを見ると、御武運長久御息災ごそくさいとある可き所に災の字が書いてない。
忠義 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
電車は走り出したが、魚籃ぎょらんのところで東京地区の警報発令、車内は全部消灯する。それから全然無灯で闇の中を電車は走る。
海野十三敗戦日記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その次は魚籃ぎょらん観音を一体、それから三聖人(三つ一組)を彫った。これらも実費だけを受け、決して余計な報酬を得ようとはしなかった。それで沢田は気の毒がって
なぎさに犬がいる。子供がいる。漁師が大きな魚籃ぎょらんをかついで、波うちぎわを歩いている。
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
首をすくめて、鯉のへえった籠を下げて、(魚籃ぎょらん)の丁稚でっちと云う形で、ついてくと、腹こなしだ、とぶらりぶらり、昼頃まで歩行あるいてさ、それから行ったのが真砂町の酒井先生の内だった。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
三田みた魚籃ぎょらんの近所に知りびとがあるので、丁度そこに居あわせた松吉という子分をつれて、すぐにまた芝の方面へ急いで行くと、ここに一つの事件が出来しゅったいしたんです
半七捕物帳:29 熊の死骸 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)