魔窟まくつ)” の例文
こちらへ着くとその日さっそく、わたしは方々の魔窟まくつを歩き回ってみました。何しろ七年ぶりなので、いきなり飛びかかったわけで。
今日の浅草千束町せんぞくちょう、慶安時代には何といったか? 洗足町せんぞくちょうといったらしい。今日も千束町は魔窟まくつだが、その時代も魔窟であった。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
魔窟まくつのことだ。こうしたことを打ちあける照子は、思いがけない出現をした俺をケムったがってはいないことはたしかだ。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
第一にリンピイは、マルガリイダという五十近い妻と一しょに、市の山の手バイロ・アルトに独特の考案になる魔窟まくつをひらいていた。
「ままになるならこの丸髷まるまげを、元の島田にしてみたい」位なもので、東京の真中まんなか、新橋や赤坂等の魔窟まくつで、小生意気なハイカラや醜業婦共の歌う下劣極まる唄に比すれば
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
矢場が魔窟まくつになつたのは、天保以後から明治にかけてのこと、貞享じやうきやう、元祿、享保——の頃は、なか/\品格の高い遊戯で、矢取女も後の矢場女のやうなものではありません。
そうかと云って自分の家が一種の魔窟まくつになってしまって、いろんな男がしっきりなしに出入りするんで、近所隣りには体裁が悪いし、それに万一、あなたに知れたら大変だと思うもんだから
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
彼奴あいつのことだから、会場はうせ魔窟まくつだろう?」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
この魔窟まくつは女からひったくられやすいソフトをかぶって来るなとか、ポケットの万年筆を女に取られて泣く泣くあがったとかいうのは、同じシマでも場所がちがうのだ。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
矢場が魔窟まくつになったのは、天保てんぽう以後から明治にかけてのこと、貞享じょうきょう、元禄、享保——の頃は、なかなか品格の高い遊戯で、矢取女も後の矢場女のようなものではありません。
魔窟まくつと当時呼ばれていたこんな最低のシマのど淫売に俺はぞっこん惚れこんでしまったのだ。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)