露時雨つゆしぐれ)” の例文
露時雨つゆしぐれ夜ごとにしげくなり行くほどに落葉朽ち腐るる植込うえごみのかげよりは絶えず土のくんじて、鶺鴒せきれい四十雀しじゅうから藪鶯やぶうぐいすなぞ小鳥の声は春にもましてにぎわし。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ええありがとうござりまする、どこにこのような御親切の相談かけて下さる方のまたあろうか、なぜお礼をば云われぬか、と左の袖は露時雨つゆしぐれ、涙に重くなしながら
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
父恋ふる我を包みて露時雨つゆしぐれ
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
朝夕の寒さに蟋蟀もまた夜遊びに馴れた放蕩兒の如く、身にしむ露時雨つゆしぐれのつめたさに、家の内が戀しくなるのであらう。
虫の声 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
朝夕の寒さに蛼もまた夜遊びに馴れた放蕩児ほうとうじの如く、身にしむ露時雨つゆしぐれのつめたさに、家の内が恋しくなるのであろう。
虫の声 (新字新仮名) / 永井荷風(著)