際物きわもの)” の例文
新聞記事を材料とした際物きわものや、その種類はもちろん一様でなかったが、錦絵の中で最も光彩を放っているのはやはり芝居の似顔絵で
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この種のものは色々の際物きわもの——当時の出来事などが仕組まれてありました。が、私の記憶しているのでは、何でも心中ものが多かった。
江戸か東京か (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
「うん、そうさ、だからいいのさ。つまり何んだ、はしりだからな。そうとも素敵もねえ際物きわものだからな。……もっとも他にも筋はある」
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
わたしのその町を去ったあと、それまでの際物きわもの問屋、漬物屋、砂糖屋、その外一二けんを買潰して出来たのがその銀行である。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
そしてそこで始めて、多数の公開観覧所が卑猥ひわいなものやあくどい際物きわもので堕落し切っているのに対して、道徳的なものをもって対抗させる機会を得るだろう。
アインシュタインの教育観 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
僅かに日清戦争の際物きわもので気を吐いたが、その後は月耕、年方等一門が踏み止まって相当多数の作品をだした。
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
饗庭篁村あえばこうそん、松居松葉、須藤南翠、村井弦斎、戸川残花、遅塚麗水、福地桜痴等は日露戦争、又は、日清戦争に際して、いわゆる「際物きわもの的」に戦争小説が流行したとき、それぞれ
明治の戦争文学 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
しかし、さすがに際物きわもののことで、草津を過ぎると、パッタリ瓦版の売行きが減じました。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そんな際物きわもの仕事が、自分の顔にでもかかるか何かのように考えているお島は、そう言って反抗したが、好い客を惹着ひきつけるような立派な場所と店と資本とをもたない自分達に取っては
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
純論理文学といわれるポーの「マリー・コージェ」すらも高級際物きわものであって、現実の犯罪事件との不可思議な暗合をまったく除き去ったならば、その魅力を半減したことはいうまでもない。
探偵小説の「謎」 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
わたしのその町を去ったあと、それまでの際物きわもの問屋、漬物屋、砂糖屋その外一二けんを買潰して出来たのがその銀行である。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
真っ先に際物きわものを出しただけにその人気は素晴らしいもので、川上と藤沢とが新聞記者に扮していたが、高田実の李鴻章が非常に評判がよかった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
新時代の幽霊「黄金仮面」のすばらしい人気を当て込んだ際物きわもの喜劇だ。興行主の奇策は見事に成功した。人々は「黄金仮面」という大看板に引きつけられ、ただこの出し物を見る為に切符を買った。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
当込みの際物きわものであるだけに、狂言全体の上からいえば、ここというとらどころもないもので、その後ふたたび舞台にものぼらなかったが、三幕目の情景だけはいつまでもわたしの頭にしみていたので、先年
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)