陰間かげま)” の例文
成長した陰間かげまの臼井金弥で、悪い所へ来たものである。髪が乱れ、衣裳が着崩れ、ちりをかぶっているところを見ると、まるで永旅ながたびでもしたようだ。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
こいつも昔は道楽者で、せがれの大吉が小綺麗に生まれたのを幸いに、子どもの時から陰間かげま茶屋へ売りました。
半七捕物帳:55 かむろ蛇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
五人のおんなと、陰間かげまの瀬川竹之丞と、仲居妓なかいおんなと、人目をそばだたせるような派手な一座に取りかこまれて
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「散々の評判ですよ。若殿だか馬鹿殿だか知らないが、ありや色氣違ひの陰間かげま野郎ですね」
金と力のないのが色男の相場、こんな陰間かげまの一匹や二匹、遠慮していては朱総しゅぶさが泣かあね。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
その女鹿坂上の、通称一本楓と言われた楓の下のなまめいた行燈の蔭から、女装した目にとろけんばかりの色香を湛えて、しきりに呼んでいるのは、元禄の京に名高い陰間かげま茶屋です。
片一方の役者の方は、これは高が、陰間かげまあがりの女形おやま。なんでもありはしないさ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
陰間かげま茶屋をのぞいて、たもとほころびを切らしたり、楊弓場ようきゅうばの女に、からかわれたり、いい気持らしかった。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
最初はもとの夫の鈴川主水への面當てに、弟子分の佐野松と逢引などをして見せたことだらうが、陰間かげま崩れのニヤけた佐野松が、いかにも小汚なく頼りなく見えたことだらう。
といってりりしい男振りではなく、色なま白く眉細く、鮎のような形をしたなまめかしい眼、鼻の高いのはいうまでもなく、べにをさしたような受け口など、成長した陰間かげまとでもいいたげである。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
芝居の色子や湯島、芳町の陰間かげまにも、こんなすぐれた美少年は見當らないでせう。
「どれどれ一見。これはヨカ稚児ちご陰間かげまでござろう、それに相違ない」
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
『あれが、陰間かげまの竹之丞か。大夫も、ちと、はばかりが無い!』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あの陰間かげま野郎は、佐野松を殺したところで、仕樣がないぢやありませんか」