陣屋じんや)” の例文
しかし、加賀見忍剣かがみにんけん龍太郎りゅうたろうやまた咲耶子さくやこにいたるまで、みなこの報告を天来の福音ふくいんときいて武田再興たけださいこう喜悦きえつにみなぎり、春風陣屋じんやにみちてきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると同じ三十日の井伊掃部頭直孝いいかもんのかみなおたか陣屋じんやに召し使いになっていた女が一人にわかに気の狂ったように叫び出した。彼女はやっと三十を越した、古千屋こちやという名の女だった。
古千屋 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
一体大塚城というのはドコにあったろう? そんな問題を出すのがそもそも野暮のドン詰りであるが、もともと城主の大石というのが定正の裨将ひしょうであるから、城と称するが実は陣屋じんやであろう。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
貞任が陣屋じんやかまえしあととも言い伝う。景色けしきよきところにて東海岸よく見ゆ。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
たくみに大殿をワナにおとしれ、桑名くわなにいる秀吉ひでよし陣屋じんやまで、送りとどけんとする呂宋兵衛、さだめし明日あすはぎょうさんな人数にんずをもってくりだすことでしょう。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
陣屋じんやの内外にあふれて、まことこれこそ極楽ごくらく景色けしきかと、見るからにただ涙ぐましい。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)