阿婆摺あばずれ)” の例文
「下品で悪かったね、どうせわたしなんぞは、下品で失礼で阿婆摺あばずれでおたんちんですから、自棄やけになったら何をするか知れたものじゃありませんよ」
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
お八重は此反対に、今は他に縁づいた異腹はらちがひの姉と一緒に育つた所為せゐか、負嫌ひの、我の強い児で、娘盛りになつてからは、手もつけられぬ阿婆摺あばずれになつた。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
脂ぎつた妖艶なお樂と、鐵火で阿婆摺あばずれで男のやうに啖呵たんかを切るお町と、出戻りとはいつても、美しくてかしこいお品の間に挾まつて、一と晩さいなまれたのです。
下等女の阿婆摺あばずれを活動力に富んでると感服したり、貧乏人の娘が汚ない扮装なりをしてめず臆せず平気な顔をしているのを虚栄にとらわれない天真爛漫と解釈したり
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「あら、本当なの早坂さん、嬉しいワねえ。私は世間から阿婆摺あばずれのように思われて居るけれど、これでも小娘のように純潔よ、お友達になりましょうね、ネ、ネ」
流行作家の死 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
をかしい事には、此時お定の方が多く語つた事で、阿婆摺あばずれと謂はれた程のお八重は、始終受身に許りなつて口寡くちすくなにのみ応答してゐた。枕についたが、二人とも仲々眠られぬ。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
此反対な二人の莫迦ばか親密なかよしなのは、他の娘共から常に怪まれてゐた位で、また半分は嫉妬やきもち気味から、「那麽あんな阿婆摺あばずれと一緒にならねえ方がえす。」と、態々わざわざお定に忠告する者もあつた。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)