ばん)” の例文
ピューッ……ピューッと、いよいよつの魔風まかぜの絶え間に、近くのすりばん、遠くの鐘、陰々と和して町々の人を呼びさます。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一つばんでは安心しているから、今度はすりばんにした。無暗矢鱈と叩いた。すると何となく方々が騒がしくなったような気がしたから、乃公は一先ず下りた。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
一番がねをついた見附のすりばんに合せて、やがて遠く、両国のやぐらや鳥越あたりのお火の見でも、コーン、コーンと、冴えた二ツ鐘をひびかせてきた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、旅川周馬は、耳につくすりばんの音と、弦之丞のことを、半々はんはんに思い迷って棒立ちとなっている。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それと共に、静かな夜気と相模川の水に反響して、カ——ン、カ——ン、カ——ンと、河向うの厚木の宿で、さかんに鳴っている三ツばんの音がたれの耳にも気づかれます。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)