錺職かざりしょく)” の例文
のちに、養母やしないおやは、江木家へ引きとられていたが、養家では、生みの男の子には錺職かざりしょくぐらいしかおぼえさせなかったが、勝気な栄子えいこには諸芸を習わせた。
江木欣々女史 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
佐兵衛という男や、錺職かざりしょくの徳治や、それから喧嘩相手の若者と、その親方というのが伴れ立って、謝罪に来た。
七日七夜 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
窓ガラスが破れ、黄ばんだ半地下室に、靴直し、古着買、いかものの錺職かざりしょくが、鼠の巣のような店を張っていた。
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
その竪川河岸にはあの婆さんが若いとき一時一緒になって喧嘩してわかれた男が今は錺職かざりしょくの老人になって住んでるそうです、あんたのお母さんの談によりますとね。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
父は——同じ錺職かざりしょくだったんですが、さかんな時分、二三人居た弟子のうちに、どこか村の夜祭に行って、いい月夜に、広々とした畑を歩行あるいて、あちらにも茅屋かややが一つ、こちらにも茅屋が一つ。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
向うの男は絶えずむっとしたような顔つきだったが、これは顔だけのことで、格別に気むずかしいというのでもなく、自分はつまらない錺職かざりしょくで不動様の裏に住んでいる、徳治と聞けばすぐわかる。
七日七夜 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)