鋸山のこぎりやま)” の例文
鋸山のこぎりやまニ登ル。」の作に「我来正逢清秋月。錦嚢将補前遊欠。」〔我来リテ正ニ逢フ清秋ノ月/錦嚢将ニ補ハントス前遊ノ欠ヲ〕の句がある。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
馬「へゝえれが、近く見えますねえ、旦那に此の間伺いましたがれがたしか鋸山のこぎりやまですね、成程鋸見たようで」
そのうちに、わたしが鋸山のこぎりやまへ登って、おびただしい蛇に出逢った話をすると、半七は顔をしかめながら笑った。
半七捕物帳:55 かむろ蛇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この写生帳は、房州の保田ほたへ上陸以来、鋸山のこぎりやまに登り、九十九谷を廻り、小湊、清澄を経て外洋の鼻を廻り、洲崎すのさきに至るまでの収穫がことごとく収めてある。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
房州鋸山のこぎりやまに、石にて刻んだ五百羅漢があるが、首は大抵なくなっている。むかし博徒ばくとが、羅漢の首を懐中しておれば、必ず博変ばくちに勝つというマジナイのために盗み取ったとのことだ。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
前に申す通りに古川節蔵ふるかわせつぞうは私の家から脱走したようなもので、後できいて見れば榎本よりかきに脱走したそうで、房州ぼうしゅう鋸山のこぎりやまとか何処どことかに居た佐幕党の人を長崎丸に乗せて、ソレを箱根山に上げて
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
しかし、ここまででさえ上って来て見れば、鹿野山よりも、鋸山のこぎりやまよりも、清澄よりも、まだ高いらしい。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「え、間違いありません、あれが上総、房州です、ほら、ごらんなさい、あの高いところが、あれが鋸山のこぎりやまでござんしょう、そうして、あれが勝浦、洲崎すのさき……間違いございません」
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いわゆる良民のうちにも、下地したじが好きで、意志がさのみ強くないものもあります。見ているうちに乗気になって、鋸山のこぎりやまへ石を仕切しきりに行く資本もとでを投げ出すものがないとはかぎらない。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「房州というのは、あのおじさん、鋸山のこぎりやまのある日本寺の、お嬢さんのいる房州なの?」
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そこで、駒井甚三郎は、程遠からぬ鋸山のこぎりやまの日本寺へ登ることを思い立ちました。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
那古へ行くならば鋸山のこぎりやま日本寺にほんじへも参詣をするがよいとか、館山あたりへ行ってはどこの旅籠はたごが親切で、土地の人気はこうだというようなことを、お角に向って細かに案内をしてくれるのであります。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)