釣銭つり)” の例文
旧字:釣錢
それからラムプをグッと大きくして、押入の端の小箪笥の曳出ひきだしから黄木綿きもめんの財布を引っぱり出して、十円のお釣銭つりを出してやった。
骸骨の黒穂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
たとい一銭でも二銭でも負けさせなければ物を買ったためしのないこの人は、その時もわずか五厘の釣銭つりを取るべく店先へ腰を卸して頑として動かなかった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「それっ切りですよ、あ、そう/\、伊豆屋の虎松が、相変らず乞食からお釣銭つりの来そうな風体ふうていで、朝から晩まで吾妻屋のあたりをウロ/\して居まさア、後家のお染さんはそれを嫌がるまいことか」
はあて彦としたことが、一眼見りゃあわからあな、そりゃあお前、女子の左頬だ。髪の付根と言い死肌の色と言い、待ちな、耳朶の形と言い、こうっと、ま、三十にゃあ大分釣銭つりもこようって寸法かな——どこで押せえた、犬ころを
それから私が十円札の釣銭つりを出すところを、うつむいたまま気を付けている模様ですから、私はイヨイヨ今夜来るなと思いました。
骸骨の黒穂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「ヘエ。どうも済みません。……わっしゃドウモこの吸口のろうの臭いが嫌いなんで……ヘヘ……有難う存じます。只今お釣銭つりを……あ……どうも相済みません。お粗末様で……」
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「お釣銭つりはお前に遣る」
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)