野趣やしゅ)” の例文
綺麗な疳高かんだかい、少し野趣やしゅを帯びた笑声がはじけるように響いた。皆んながおたけの方を見た。人見がこごみ加減に何か話しかけていた。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
左はやなぎ稚松わかまつと雑木の緑とうつした青とで野趣やしゅそのままであるが、遊園地側の白い道路は直立した細い赤松の並木が続いて、一
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
せいぜい二十歳そこそこでしょうか、まだ世馴れない様子のうちに、妙に野趣やしゅを帯びた、荒々しさのある人柄です。
主楽器は太鼓とかねであった。それに笛やササラのがからむ気だるい野趣やしゅをおびた民楽みんがくだが、遠くには、金剛や葛城かつらぎの山波が横たわり、空には昼の月があった。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やはり周囲の野趣やしゅをそのまま取り入れて、あくまでも自然に作った方がおもしろい。長い汽車旅行に疲れた乗客の眼もそれに因っていかに慰められるか判らない。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ふるくは俳人の嵐雪が住み、歌人のママ茂真淵が住みまして、真淵などは、その周囲の野趣やしゅのあるさまから家の号を懸居と称えたということを池上はいつか話していました。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)