野次馬やじうま)” の例文
が、いよいよ帰るとなっても、野次馬やじうまは容易に退くもんじゃない。お蓮もまたどうかすると、弥勒寺橋みろくじばしの方へ引っ返そうとする。
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
六区を抜けて広い通りに出ると、深夜ながら威勢のいい野次馬やじうまが、チラホラかけだしていた。軒にたたずんで赤い空を眺めている人々もあった。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
江戸で喧嘩をすると野次馬やじうまが出て来て滅茶苦茶にして仕舞しまうが、大阪では野次馬はても出て来ない。夏の事で夕方めしくってブラ/\出て行く。申合もうしあわせをして市中で大喧嘩の真似をする。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
偶々たまたまチョッカイを出しても火傷やけどをするだけで、やともすると野次馬やじうま扱いされて突飛ばされたりドヤされたりしている。これでは二葉亭が一世一代の芝居を打とうとしても出る幕がないだろう。
二葉亭追録 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
このときも我が同胞どうほうであったならば、すぐに野次馬やじうまが乗り込んで来て
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
真暗な公園には彼等の跡を追う野次馬やじうまもいなかった。同じベンチに一人の労働者風の男が、何事もなかったかの様に、ぼんやりと考え事をしていた。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
このうわさをまったく知らないで、公園に足を向ける人々も少ない数ではなかったし、どこからともなく集まってくる、向こう見ずの野次馬やじうま連が、おびただしい群れをなして
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
この二人の変装者は、野次馬やじうまの流れにまじって歩いてはいたけれど、むろん野次馬ではない。殺人魔捜索の使命を帯びていたのだ。それに加うるに、かさなる個人的怨恨えんこんがある。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
物好きな野次馬やじうまとで占領されたといってもよいほどであった。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)