酢屋すや)” の例文
酒だるを、となり村の酒屋から、町の酢屋すやまで、とどけるようにたのまれたのです。その中には、お酒のおりがつまっていました。
和太郎さんと牛 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
もちろん高氏は、すでに斬刑ざんけいずみのよしを答え、その群盗どもが、酢屋すやへ押入った当夜のもようを詳しい書類として、殿ノ法印まで送りとどけた。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その晩の八時から二等室で日本人の酢屋すやと英人のカアタアと両人の為に僕等の仲間で心ばかりの送別会を開いた。酢屋すやは横浜の貿易商で孟買ボンベイとカルカツタとに十年ぜんから店を持つて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
当時私ハ京都三条通河原町一丁下ル車道酢屋すやに宿申候。
滿谷みつたに、長谷川、徳永、近江、柚木ゆのき志貴しぎ酢屋すや、僕の八人は何の目的も無く電車の終点まで乗つて下車し、引返して偶然博物館の前に出て、滿谷等はその附近を写生し、徳永、志貴、近江
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
酢屋すやに押入った先夜の首魁しゅかい四名の者は、はや六条河原で首斬ってしまいました。いかに吟味しても、一言も吐きませぬゆえ、河原へ曳き出し、つい昨日、処分をすませたばかりなのです」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
孟買ボンベイと聞くと僕等の門外漢には大分だいぶんに日本商人の勢力が及んでさうに想はれるが、三井物産と郵船会社との支店を除いて個人の経営する商店と云へば酢屋すやだけさうである。それ酢屋すやは憤慨して居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)