配膳はいぜん)” の例文
西洋人に日本の郷土色を知せるには便利だろうという実業家の心尽しだった。稚子髷ちごまげに振りそでの少女の給仕が配膳はいぜんを運んで来た。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
配膳はいぜんが終ると主催者が起つて挨拶あいさつをはじめ、次いで長々と狸肉の味について、その蘊蓄うんちくを傾けるのである。
たぬき汁 (新字旧仮名) / 佐藤垢石(著)
配膳はいぜんの代わりに一つの大きな卓を置いたような食堂の光景が、やがて通禧らの目に映った。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
配膳はいぜんが始まり、席が定まった時分に、寿々龍の銀子も女中に声かけられ、三十畳ばかりの広間へ入って行き、女中の運んで来た銚子ちょうしをもつと、つかつかと正面床の間の方へ行き
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
庖丁ほうちょうからお配膳はいぜんまで、ひとりでしないと気のすまない、面白いおじいさんでございますよ
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「ぬしの無い」の句は客席にあっては配膳はいぜんについていると、そこに一つ空席があってそこの膳には主がない、それが何となく目についているとやがて給仕の女がきてその膳を下げて行った
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
内容は密会であるが、形式は金吾家のこころ祝いというわけで、座にはきらびやかに屏風びょうぶをめぐらし、煌々こうこうしょくを列ね、さすが特別収入のある連盟だけに、美酒佳肴かこう配膳はいぜんにもぬかりはなかった。
思い違い物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)